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傷害保険・賠償責任保険

火災保険・自動車保険のほかにも、日常生活で起こりうるさまざまなリスクを補償する損害保険があります。その代表が、ケガをカバーする 傷害保険 と、他人にケガをさせたり物を壊したりして賠償責任を負ったときに備える 賠償責任保険 です。

この章では、4種類の傷害保険(普通・家族・国内旅行・海外旅行)の補償範囲の違いと、賠償責任の世界で重要な 失火ノ責任ニ関スル法律(失火責任法) および 個人賠償責任保険 を整理します。「何が補償されて、何が対象外か」のラインを正確に押さえることが、試験対策の中心になります。

傷害保険 ── 「急激・偶然・外来」の事故によるケガを補償

Section titled “傷害保険 ── 「急激・偶然・外来」の事故によるケガを補償”

傷害保険 は、被保険者がケガをしたときに保険金が支払われる損害保険です。ただし、どんなケガでも補償されるわけではなく、急激・偶然・外来 の事故によるものに限られます。この3要件は、傷害保険を理解する出発点です。

要件意味
急激ケガの原因となる事故が、突発的に起こること(じわじわとした不調は対象外)
偶然予期せず起こること(自分から故意に起こした事故は対象外)
外来ケガの原因が体の外から作用すること(病気・心臓発作など内部要因は対象外)

たとえば、階段で転倒して足を骨折した、走っていて電柱にぶつかった、といった事故はすべての要件を満たしケガが補償されます。一方、長年の生活習慣で発症した腰痛や、心臓発作で倒れた拍子に頭を打った、といったケースは「外来」要件を満たさず補償対象外です。

普通傷害保険 は、国内外を問わず日常生活・職務中・スポーツ中などで生じた傷害を、24時間・365日カバーする標準的な傷害保険です。注意したいのは、次の事故は 基本補償の対象外 であることです。

普通傷害保険の対象外取扱い
細菌性食中毒・ウイルス性食中毒対象外(特約で対象化可)
地震・噴火・津波によるケガ対象外(特約で対象化可)
病気・心臓発作対象外(外来要件を満たさない)
自殺・故意による事故対象外(偶然要件を満たさない)

保険料は被保険者の職業・職種で決まる のも特徴です。デスクワーク中心の人より、建設業・運送業など事故リスクの高い職業の人のほうが保険料は高くなります。性別や年齢では保険料は変わりません。

試験で出るポイント

「普通傷害保険の保険料は、被保険者の年齢や性別によって決まる」は 誤り です。普通傷害保険の保険料は 職業・職種 で決まり、年齢・性別では変わりません。これは生命保険との大きな違いです(2024年5月 問9、2025年5月 問9)。

家族傷害保険 は、1つの契約で家族全員を被保険者とする傷害保険です。試験頻出の重要ポイントは、契約後に生まれた子も自動的に被保険者となり、追加保険料は不要 であることです。

被保険者の範囲は次のとおりです。

  • 本人
  • 配偶者
  • 生計を一にする同居の親族
  • 生計を一にする別居の未婚の子

「生計を一にする」とは、同じ家計で暮らしているということで、別居でも仕送りを受けている学生の子などは含まれます。「未婚」がポイントで、結婚して家庭を持った子は対象外です。

試験で出るポイント

「家族傷害保険の被保険者の家族に新たに子が生まれた場合、被保険者として追加するために保険会社への通知と追加保険料の支払いが必要である」は 誤り です。契約後に生まれた子も自動的に被保険者 となり、追加保険料は不要 です(家族の人数で保険料は変わらない)。

国内旅行傷害保険・海外旅行傷害保険

Section titled “国内旅行傷害保険・海外旅行傷害保険”

旅行中の事故をカバーする傷害保険には、国内旅行傷害保険海外旅行傷害保険 があります。両者は補償範囲がやや異なります。

補償の種類国内旅行傷害保険海外旅行傷害保険
旅行中のケガ(急激・偶然・外来)
細菌性食中毒・ウイルス性食中毒(基本補償)(基本補償)
疾病(旅行中の病気)×
地震・噴火・津波によるケガ×

国内旅行傷害保険は、普通傷害保険と異なり 食中毒も基本補償 に含まれるのが特徴です。一方、海外旅行傷害保険は、それに加えて 疾病(病気)と地震・噴火・津波によるケガ も基本補償の対象になります。海外では病気で受診しても日本の健康保険が使えないため、医療費を補償する必要性が高いという理由です。

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    A[普通傷害保険] -->|対象外| X1[食中毒・地震]
    B[国内旅行傷害保険] -->|対象内| X2[食中毒]
    B -->|対象外| X3[地震・疾病]
    C[海外旅行傷害保険] -->|対象内| X4[食中毒・疾病・地震]

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試験で出るポイント

食中毒の扱いがよく問われます。普通傷害保険は対象外、国内・海外旅行傷害保険は基本補償 の対比を覚えましょう。地震・噴火・津波によるケガは、国内旅行傷害保険でも対象外(海外旅行のみ補償)という点も頻出です。

ここまでの内容を一覧表にまとめます。

保険の種類主な対象者食中毒地震・津波疾病
普通傷害保険本人×××
家族傷害保険本人+家族(自動的に追加)×××
国内旅行傷害保険国内旅行中の本人××
海外旅行傷害保険海外旅行中の本人

失火責任法 ── 軽過失なら隣家への賠償義務なし

Section titled “失火責任法 ── 軽過失なら隣家への賠償義務なし”

賠償責任の世界に入る前に、火災に関する重要な特別法を押さえましょう。失火ノ責任ニ関スル法律(失火責任法) です。

民法の原則と失火責任法の例外

Section titled “民法の原則と失火責任法の例外”

民法709条の不法行為責任では、本来「不注意で他人の物を壊したら、その損害を賠償しなければならない」のが原則です。しかし日本では、住宅が密集していて火事が広がりやすいことから、失火責任法 という特別法によって、軽過失(軽い不注意)による失火 であれば、他人への損害賠償責任を負わない と定められています。

ただし次の場合は、失火責任法の適用がなく賠償責任を負います。

ケース失火責任法の適用賠償責任
軽過失 で火を出し隣家を焼失させたありなし(賠償義務なし)
重過失 で火を出し隣家を焼失させたなしあり(賠償義務あり)
故意 に火を放って隣家を焼失させたなしあり(放火)

つまり、もらい火で家を失っても、相手が軽過失なら賠償を求めることはできません。だからこそ、自分の家は自分の火災保険で守る必要があるわけです。

ここで重要な例外があります。借家人 が借家を焼失させた場合、家主に対しては 賃貸借契約に基づく原状回復義務(債務不履行責任) を負うため、失火責任法の適用は受けません。つまり、借家人が軽過失で火を出した場合でも、家主には賠償責任を負う ことになります。

焼失の相手借家人の責任
家主(賃貸借契約あり)賠償責任あり(債務不履行責任、失火責任法は適用されない)
隣家(契約なしの第三者)軽過失なら賠償責任なし(失火責任法が適用される)

借家人が家主への賠償に備えるには 借家人賠償責任保険、隣家への類焼に備えるには 類焼損害補償特約 などを利用します。

試験で出るポイント

「失火責任法により、借家人が借家を焼失させても家主に対しては賠償責任を負わない」は 誤り です。家主との関係は賃貸借契約上の債務不履行責任 であり、失火責任法は適用されません。借家人は家主に賠償義務を負います。

個人賠償責任保険 ── 日常生活の偶然事故をカバー

Section titled “個人賠償責任保険 ── 日常生活の偶然事故をカバー”

個人賠償責任保険 は、日常生活で他人にケガをさせたり、他人の物を壊したりして法律上の賠償責任を負ったときに保険金が支払われる保険です。火災保険・自動車保険・傷害保険に特約として付帯することが多く、保険料も比較的安価です。

  • 買い物中にお店の商品を誤って落とし、壊してしまった
  • 自転車で歩行者と衝突してケガをさせた
  • マンションで水漏れを起こし階下の住人に損害を与えた
  • 散歩中にペットの犬が他人を噛んでケガをさせた

個人賠償責任保険は 日常生活の偶然事故 が対象なので、次のものは補償されません。

対象外となる事故理由
業務中・職務上の事故仕事のリスクは別保険でカバー
自動車事故任意自動車保険の対物・対人賠償でカバー
故意による損害偶然性を欠く
同居の親族への損害家族間は保険の対象外(モラルリスク防止)
被保険者本人のケガ・物の損害「他人」への賠償が対象

試験で出るポイント

個人賠償責任保険の対象外として頻出なのは、(1)業務中の事故、(2)自動車事故、(3)同居親族への損害、の3点です。「自転車で配達業務中に通行人にケガをさせた」というケースは、業務中 なので個人賠償責任保険の対象外、という出題パターンに注意しましょう。

賠償責任保険のその他のタイプ(参考)

Section titled “賠償責任保険のその他のタイプ(参考)”

個人賠償責任保険のほかにも、賠償責任に備える保険にはさまざまな種類があります。FP3級では概要を押さえる程度で十分です。

保険の種類補償対象
施設所有(管理)者賠償責任保険店舗・施設の管理ミスで利用者にケガをさせた等
請負業者賠償責任保険工事中の事故で第三者に損害を与えた等
生産物賠償責任保険(PL保険)販売した製品の欠陥で他人にケガ・損害が発生した等
借家人賠償責任保険借家を焼失・破損させ家主への賠償責任を負った

これらは個人ではなく 企業向け の賠償責任保険であり、企業の事業活動に伴うリスクをカバーします。

傷害保険・賠償責任保険まとめ

Section titled “傷害保険・賠償責任保険まとめ”

最後に、傷害保険・賠償責任保険の重要事項をまとめます。

項目内容
傷害保険の3要件急激・偶然・外来 の事故によるケガ
普通傷害保険の対象外食中毒・地震・噴火・津波・病気
普通傷害保険の保険料職業・職種 で決まる(年齢・性別では変わらない)
家族傷害保険契約後に生まれた子も 自動的に被保険者(追加保険料不要)
国内旅行傷害保険食中毒は 補償対象、地震・津波は対象外
海外旅行傷害保険食中毒・疾病・地震・津波すべて 補償対象
失火責任法軽過失 の失火者は隣家への賠償責任を 免除(重過失・故意は責任あり)
借家人と家主の関係失火責任法 適用なし(債務不履行責任)
個人賠償責任保険の対象外業務中・自動車事故・故意・同居親族

試験で出るポイント

傷害保険・賠償責任保険の出題では、(1)4種類の傷害保険の補償範囲(食中毒・地震の対比)、(2)家族傷害保険の自動付加、(3)失火責任法の軽過失と借家人の例外、(4)個人賠償責任保険の対象外3点(業務中・自動車・同居親族)の4つが鉄板論点です。


普通傷害保険は、国内外を問わず日常生活で生じた急激・偶然・外来の事故によるケガを補償の対象とするが、細菌性食中毒や地震・噴火・津波によるケガは補償対象外であり、これらを補償するには特約の付帯が必要である。次の記述の正誤を判定せよ。

解答

正解:○

普通傷害保険は 急激・偶然・外来 の事故によるケガが補償対象であり、細菌性食中毒・地震・噴火・津波 によるケガ、および病気は基本補償の対象外である。これらをカバーするには、それぞれ特約の付帯が必要となる。

家族傷害保険の保険期間中に被保険者である夫婦に新たな子が生まれた場合、被保険者として追加するためには、保険会社への通知と追加保険料の支払いが必要である。次の記述の正誤を判定せよ。

解答

正解:×

家族傷害保険では、保険期間中に生まれた子は 自動的に被保険者 となり、通知や追加保険料の支払いは不要 である。家族傷害保険の保険料は家族の人数によって変わらず、契約時に決まった金額のままである。

国内旅行傷害保険では、旅行中に食べた食事が原因で生じた細菌性食中毒は基本補償の対象となるが、旅行中に発生した地震・津波によるケガについては基本補償の対象外である。次の記述の正誤を判定せよ。

解答

正解:○

国内旅行傷害保険は 細菌性食中毒は基本補償 の対象だが、地震・噴火・津波によるケガは対象外 である。地震・津波まで基本補償でカバーされるのは 海外旅行傷害保険 であり、国内旅行と海外旅行の補償範囲の違いを正確に押さえることが重要である。

失火ノ責任ニ関スル法律によれば、軽過失による失火で隣家を焼失させた場合、失火者は民法709条の不法行為に基づく損害賠償責任を負わないが、重過失による失火の場合は損害賠償責任を負う。次の記述の正誤を判定せよ。

解答

正解:○

失火責任法 は、住宅密集地で火災の被害が広範囲に及びやすい日本の事情を踏まえ、軽過失の失火者を不法行為責任から免除 している。ただし 重過失故意 の場合は責任を負う。なお、借家人が借家を焼失させた場合は家主との賃貸借契約上の 債務不履行責任 を負うため、失火責任法の適用はない。

個人賠償責任保険(個人賠償責任補償特約)では、被保険者が日常生活において他人にケガをさせたり他人の物を壊したりして法律上の賠償責任を負った場合に保険金が支払われるが、業務遂行中の事故や自動車事故による賠償責任は補償の対象外となる。次の記述の正誤を判定せよ。

解答

正解:○

個人賠償責任保険は 日常生活の偶然事故 による賠償責任を補償する保険であり、(1)業務中・職務上の事故、(2)自動車事故、(3)故意の損害、(4)同居親族への損害 はいずれも対象外である。業務中の事故は施設所有者賠償責任保険等、自動車事故は任意自動車保険でカバーする。

普通傷害保険の保険料は、被保険者の年齢・性別を主たる基準に算出されるため、若年者よりも高齢者のほうが、同条件であれば保険料は高くなる。次の記述の正誤を判定せよ。

解答

正解:×

普通傷害保険の保険料は、被保険者の 職業・職種 によって決まり、年齢や性別では変わらない。これは生命保険と大きく異なる点であり、デスクワーク中心の職業より建設業・運送業のほうが保険料が高くなる、というのが基本的な考え方である。

次のうち、海外旅行傷害保険の 基本補償の対象 として 最も適切でないもの はどれか。

① 海外旅行中、現地のレストランで食事をして細菌性食中毒にかかり入院した。 ② 海外旅行中、滞在先のホテルでインフルエンザにかかり医療機関で治療を受けた。 ③ 帰国後の自宅で、旅行中の疲れがたまったことが原因で腰を痛めた。

解答

正解:③

海外旅行傷害保険は 海外旅行中 に発生した事故・疾病が補償対象であり、補償期間は通常 「住居を出発してから帰宅するまで」 である。①の食中毒、②の疾病はいずれも海外旅行中の出来事で基本補償の対象となる。一方、③は 帰国後の自宅での事故 であり、補償期間外となるため対象外である。

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