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損害保険料控除と保険金の課税

損害保険にまつわる税金の論点は、所得控除(地震保険料控除)個人が受け取った保険金の課税事業用保険の経理処理の3本柱で構成されます。FP3級では、地震保険料控除の上限額、損害保険金の非課税原則、事業用火災保険金の圧縮記帳といった定番論点が繰り返し出題されます。

なお、生命保険料控除と異なり、損害保険料控除は2007年(平成19年)に廃止され、現在は地震保険料控除のみが存続している点も押さえておきましょう。

損害保険金の課税 ── 個人の損保金は原則「非課税」

Section titled “損害保険金の課税 ── 個人の損保金は原則「非課税」”

個人がプライベートで加入している損害保険から受け取った保険金は、原則として非課税です。これは、損害保険金が「損害の補填」を目的とする給付であり、所得(もうけ)ではないためです。所得税法第9条により、損害賠償金や心身に加えられた損害に対する保険金等は非課税所得とされています。

保険金課税扱い理由
火災保険金(住宅・家財の損害)非課税損害の補填
自動車保険の対人・対物賠償保険金非課税損害賠償金に相当
人身傷害補償保険金非課税身体の損害補填
傷害保険の入院・通院・後遺障害保険金非課税身体の損害補填
個人賠償責任保険金非課税損害賠償金

ただし、例外もあります。

  • 死亡保険金(傷害保険・自動車保険の搭乗者傷害保険など)は、生命保険と同様に契約者・被保険者・受取人の3者関係により、相続税・所得税・贈与税のいずれかが課税されます。
  • 積立型損害保険の満期返戻金・解約返戻金は、貯蓄部分への課税として**所得税(一時所得)**が課されます。

損害の補填という性格を持たない保険金は、課税対象になる、と整理すると分かりやすいでしょう。

試験で出るポイント

「個人が受け取った火災保険金や自動車保険の賠償金は、すべて所得税の課税対象となる」という選択肢は 誤り個人の損害保険金は原則として非課税 という大原則をまず押さえること。

地震保険料控除 ── 唯一残った損害保険料控除

Section titled “地震保険料控除 ── 唯一残った損害保険料控除”

地震保険料控除は、1年間に支払った地震保険料の一定額を所得から差し引ける所得控除です。所得税法第77条に規定されています。

税目控除額上限
所得税支払った地震保険料の 全額最大5万円
住民税支払った地震保険料の 2分の1最大2.5万円

たとえば年間地震保険料が4万円なら、所得税は4万円全額控除、住民税は2万円控除となります。年間6万円支払っても、所得税は5万円、住民税は2.5万円が限度です。

地震保険料控除の対象となるのは、**自己または自己と生計を一にする配偶者その他の親族が所有する居住用家屋・生活用動産(家財)**を保険対象とする地震保険契約です。事業用建物・別荘などにかけた地震保険は控除の対象になりません(後述の按分参照)。

商店主の自宅兼店舗のように、居住用と事業用が混在する建物では、家屋の床面積で按分し、居住用部分に対応する地震保険料のみが控除の対象となります。

床面積比控除額の計算
居住用90%以上全額を居住用とみなして控除可
居住用が90%未満居住用部分の床面積比 で按分した部分のみが控除対象

たとえば店舗併用住宅で居住用部分が60%・店舗部分が40%なら、支払った地震保険料の60%相当額が地震保険料控除の計算対象となります。

試験で出るポイント

地震保険料控除の上限は 所得税5万円・住民税2.5万円、所得税は支払額の 全額、住民税は支払額の 2分の1 が控除されます。生命保険料控除と数値を取り違えないように。

経過措置 ── 旧長期損害保険料控除

Section titled “経過措置 ── 旧長期損害保険料控除”

廃止された損害保険料控除のうち、2006年(平成18年)12月31日以前に契約した長期損害保険(保険期間10年以上で満期返戻金あり等の要件を満たすもの)については、経過措置として地震保険料控除の枠内で控除を受けられる場合があります。

ただしFP3級では「現行の損害保険料控除は地震保険料控除のみ」という大原則を覚えていれば十分で、経過措置の細部は出題されにくい論点です。

事業用火災保険金の経理 ── 圧縮記帳

Section titled “事業用火災保険金の経理 ── 圧縮記帳”

個人事業主・法人が事業用建物・機械設備にかけた火災保険から保険金を受け取った場合は、原則として保険差益(受取保険金から建物等の帳簿価額・滅失経費を差し引いた金額)が事業所得・法人の所得として課税されます。

しかし、その保険金を使って代替の建物・設備を取得した場合は、税法上の特例として圧縮記帳を選択できます。

圧縮記帳とは、保険金で代替資産を取得した場合に、**保険差益相当額を取得した代替資産の帳簿価額から差し引く(圧縮する)**ことで、その年の課税所得を圧縮し、課税の繰延べを可能にする制度です(法人税法第47条・所得税法施行令第90条)。

代替資産の帳簿価額 = 取得価額 − 圧縮限度額(保険差益)

具体例:火災で旧工場(帳簿価額2,000万円)が全焼し、保険金5,000万円が支払われ、新工場を5,000万円で建てた場合。

  • 圧縮しない場合: 保険差益3,000万円が当期の所得となり、課税される。
  • 圧縮記帳を選択した場合: 新工場の帳簿価額を 5,000万円 − 3,000万円 = 2,000万円 に圧縮。当期の課税所得には3,000万円が計上されない(課税が繰り延べられる)。

ただし、これは課税の繰延べであって減税ではありません。圧縮記帳後は新資産の帳簿価額が小さくなるため、その後の減価償却費が少なくなり、結果として将来の課税所得が増えるためです。

項目圧縮記帳をしない圧縮記帳を選択
当期の保険差益課税あり(3,000万円課税)なし(圧縮で相殺)
新資産の帳簿価額5,000万円2,000万円
将来の減価償却費大きい(節税効果大)小さい(節税効果小)
通算した税負担同じ同じ(繰延べ効果のみ)

試験で出るポイント

圧縮記帳は 「課税の繰延べ」 であって減税ではないこと、事業用建物の保険金で代替資産を取得した場合に選択可能 であることを押さえる。個人の住宅火災保険金には適用されません。

休業補償・店舗休業保険金の課税

Section titled “休業補償・店舗休業保険金の課税”

事業者が、火災等で店舗・工場が休業した期間の収益減を補うために加入する店舗休業保険(休業補償保険)の保険金は、本来得られるはずだった売上・利益の補填であるため、事業所得の収入金額に算入され課税されます。

これは、損害保険金が「損害の補填」だから非課税という個人の場合のロジックと一見矛盾しますが、考え方は次の通りです。

  • 個人の損害保険金(家財の損害補填) ── 受け取った保険金は失った財産価値の補填。所得(もうけ)ではないため非課税。
  • 事業の休業補償保険金 ── 本来計上されるはずだった売上・利益(事業所得)の代替 であるため、事業所得として課税される。
受取保険金課税扱い
個人の住宅火災保険金(建物・家財の損害)非課税
事業用建物の火災保険金(保険差益)事業所得(圧縮記帳の選択可)
事業の 休業補償保険金(休業期間の利益補填)事業所得(圧縮記帳不可)
自動車事故の対人・対物賠償保険金(個人)非課税

「失った『モノ』への補填は非課税、失った『売上・利益』への補填は課税」と整理すると覚えやすくなります。

個人事業主や法人が支払った事業用の損害保険料は、保険の種類によって経理処理が異なります。

掛け捨て型(一般の火災保険・賠償責任保険等)

Section titled “掛け捨て型(一般の火災保険・賠償責任保険等)”

事業用に加入した火災保険料・賠償責任保険料・自動車保険料などのうち掛け捨て部分は、その期の損金(必要経費)に算入できます。

積立型損害保険の保険料は、積立部分(満期返戻金の原資となる部分)と掛け捨て部分(純保険料・付加保険料)に分かれます。

  • 積立部分 ── 保険積立金として資産計上(損金にならない)
  • 掛け捨て部分 ── 損金(必要経費)に算入

満期時には、保険積立金が取り崩され、満期返戻金との差額が事業所得(または法人の所得)として課税されます。

graph LR
    A[事業用の損保料] --> B{保険の種類は?}
    B -->|掛け捨て型<br/>火災・賠償等| C[全額を必要経費]
    B -->|積立型| D{保険料を分割}
    D -->|積立部分| E[保険積立金として<br/>資産計上]
    D -->|掛け捨て部分| F[必要経費に算入]

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個人事業主の自宅兼店舗の地震保険料

Section titled “個人事業主の自宅兼店舗の地震保険料”

個人事業主が、自宅兼店舗にかけている地震保険料については、次の二重の整理が必要です。

  1. 居住用部分の保険料地震保険料控除(所得控除)の対象
  2. 店舗(事業用)部分の保険料 → 事業所得の 必要経費

つまり、同じ建物にかけた1本の地震保険でも、床面積比で按分し、居住用部分は地震保険料控除、店舗部分は必要経費として、それぞれ別の方法で税額計算に反映されます。

試験で出るポイント(総まとめ)

Section titled “試験で出るポイント(総まとめ)”

試験で出るポイント

  • 個人の損害保険金は 原則として非課税(損害の補填だから)。例外は死亡保険金・積立型の満期返戻金。
  • 地震保険料控除:所得税は 支払額の全額・最大5万円、住民税は 支払額の2分の1・最大2.5万円
  • 店舗併用住宅は 居住用部分の床面積比で按分
  • 事業用火災保険金で代替資産を取得した場合は 圧縮記帳 を選択でき、課税の繰延べ が可能(減税ではない)。
  • 休業補償保険金 は売上・利益の補填なので 事業所得として課税 される。
  • 旧損害保険料控除は2007年に廃止され、現行は 地震保険料控除のみ が存続。

個人が居住用建物に係る火災保険から受け取った火災保険金は、原則として一時所得として所得税の課税対象となる。次の記述の正誤を判定せよ。

解答

正解:×

個人が居住用建物・家財に係る損害保険から受け取った火災保険金は、損害の補填 という性格を持つため、原則として 非課税 である(所得税法第9条)。所得(もうけ)ではないため、一時所得にも該当しない。なお、積立型損害保険の 満期返戻金 や、傷害保険の 死亡保険金 は例外的に課税対象となる。

地震保険料控除における控除額の上限は、所得税で5万円、住民税で2.5万円であり、所得税では支払った地震保険料の全額が、住民税では支払った地震保険料の2分の1が控除の対象となる。次の記述の正誤を判定せよ。

解答

正解:○

地震保険料控除の控除額は、所得税:支払額の全額(最大5万円)住民税:支払額の2分の1(最大2.5万円) である。生命保険料控除と数値を取り違えないように注意したい。年間支払保険料が3万円なら、所得税は3万円・住民税は1.5万円が控除される。

個人事業主が、事業用の店舗建物にかけていた火災保険から保険金1億円を受け取り、同年中に同額の代替建物を取得した場合、所得税法上、圧縮記帳の特例を選択することにより、保険差益部分にかかる課税を将来に繰り延べることができる。次の記述の正誤を判定せよ。

解答

正解:○

事業用資産の火災保険金で代替資産を取得した場合は、圧縮記帳 を選択できる。保険差益相当額を代替資産の帳簿価額から差し引くことで、その年の課税所得を圧縮できる。ただしこれは 課税の繰延べ であって、減税ではない。圧縮後は代替資産の帳簿価額が小さくなり、将来の減価償却費が減るため、長期的に見れば税負担総額は変わらない。

個人事業主が事業用に加入していた店舗休業保険から受け取る、休業期間中の収益減を補う保険金は、損害の補填であるため非課税となる。次の記述の正誤を判定せよ。

解答

正解:×

店舗休業保険(休業補償保険)の保険金は、本来得られるはずだった売上・利益の代替であるため、事業所得の収入金額に算入 され課税される。「失った『モノ』への補填は非課税、失った『売上・利益』への補填は課税」と整理すると分かりやすい。圧縮記帳の対象にもならない。

地震保険料控除に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

① 地震保険料控除の対象となるのは、自己または自己と生計を一にする配偶者その他の親族が所有する居住用家屋および生活用動産を保険の目的とする地震保険契約の保険料である。 ② 店舗併用住宅にかけた地震保険の保険料は、居住用部分・事業用部分にかかわらず、その全額が地震保険料控除の対象となる。 ③ 法人が支払った事業用建物の地震保険料は、その全額が地震保険料控除の対象となる。

解答

正解:①

①が正しい。地震保険料控除の対象は、自己または生計を一にする配偶者・親族が所有する 居住用家屋および生活用動産(家財) を対象とする契約に限られる。②は誤り。店舗併用住宅では、居住用部分の床面積比で按分した保険料のみが控除対象である(居住用90%以上は全額可)。③も誤り。地震保険料控除はそもそも所得税の 個人 に対する所得控除であり、法人には適用されない。

個人事業主が事業所得の金額の計算上、必要経費に算入できるものとして最も適切なものはどれか。

① 自宅にかけている火災保険料(事業には全く関係ない居住用部分のみ)。 ② 事業用倉庫にかけている火災保険料の掛け捨て部分。 ③ 自身の生命保険契約に係る生命保険料。

解答

正解:②

②が正しい。事業用建物にかけた火災保険料の 掛け捨て部分 は、事業所得の 必要経費 に算入できる。①は事業に関係ない自宅部分なので必要経費にならない(家事費)。③の生命保険料は事業の経費ではなく、所得控除(生命保険料控除)の対象となる。なお、積立型損害保険の積立部分は資産計上、掛け捨て部分のみ必要経費となる点も併せて押さえたい。

積立型の損害保険における満期返戻金は、損害の補填ではないため、所得税の一時所得として課税の対象となる。次の記述の正誤を判定せよ。

解答

正解:○

積立型損害保険の 満期返戻金・解約返戻金 は、損害の補填ではなく貯蓄部分の払戻しに相当するため、所得税(一時所得) の課税対象となる。一時所得には50万円の特別控除があり、その後の金額の2分の1のみが他の所得と合算される(1/2課税)。「個人の損保金はすべて非課税」というシンプルな整理から外れる例外として頻出論点である。

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