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遺言・遺産分割

被相続人が亡くなった後、相続財産は相続人へと移転しますが、「誰がどの財産をどれだけ取得するか」を決める方法には大きく分けて2つあります。生前に被相続人が残した遺言による方法と、相続人全員で話し合って決める遺産分割協議による方法です。

この章では、民法が定める遺言の3方式(自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言)の作成要件・検認の要否・特徴を比較しながら整理し、続けて遺産分割協議のルール・遺産分割協議書の役割・相続放棄や限定承認の期限まで、相続発生から分割までの一連の流れを学びます。FP3級学科では、自筆証書遺言の方式緩和(財産目録のパソコン作成可)や、検認が必要・不要の組み合わせが定番論点として繰り返し出題されます。

被相続人が遺言を残していれば、原則としてその内容に従って財産が承継されます。遺言がない場合や、遺言があっても全財産を網羅していない場合には、相続人全員による遺産分割協議で取り分を決めることになります。

ただし、遺言があっても相続人全員の合意があれば、遺言と異なる遺産分割をすることも可能です。逆に遺言がなくても、相続人全員の合意があれば法定相続分と異なる遺産分割を自由に決められます(民法907条)。

遺産分割の方法は大きく次の3つです。

分割方法内容
指定分割遺言で被相続人が分割方法を定める
協議分割相続人全員の協議で分割方法を決める(遺言があっても全員合意で優先可)
調停・審判分割協議が成立しない場合、家庭裁判所の調停・審判で決定

試験で出るポイント

「遺言があれば必ず法定相続分どおり強制」「遺言がなければ法定相続分どおり強制」のいずれも誤り。相続人全員の合意があれば自由に分割できるのが原則です。

民法が定める普通方式の遺言は、自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の3種類です。それぞれの違いを比較しながら見ていきます。

自筆証書遺言は、遺言者が遺言の全文・日付・氏名を自書し、これに押印することで成立します。最も簡便で費用もかからない方式ですが、要件を1つでも欠くと無効になるリスクがあります。

ポイントは2019年の民法改正で導入された財産目録の方式緩和です。本文は遺言者の自書が必須ですが、添付する財産目録については、パソコン作成や通帳のコピーでも認められるようになりました。ただし、財産目録の各ページ(両面なら両面)には遺言者本人の署名・押印が必要です。

項目内容
本文全文自書(パソコン不可)
日付自書(「○年○月吉日」のように特定できないものは無効)
氏名自書
押印必要(印鑑の種類は問わないが実印が望ましい)
財産目録パソコン作成・通帳コピー可(各頁に署名押印必要)
証人不要
保管自宅保管または法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用可
検認自宅保管 → 必要/法務局保管 → 不要

2020年7月から始まった自筆証書遺言書保管制度を利用して法務局に保管しておくと、遺言書の紛失・改ざんを防げるうえ、相続開始後の検認手続が不要になるという大きなメリットがあります。

公正証書遺言は、遺言者が公証人に口授(こうじゅ)した内容に基づき、公証人が公正証書として作成する方式です。証人2人以上の立会いが必要で、原本は公証役場に保管されます。

項目内容
作成者公証人(遺言者の口授に基づく)
証人2人以上必須(推定相続人・受遺者・その配偶者・直系血族は証人になれない)
保管公証役場で原本を保管(紛失・改ざんの心配なし)
費用公証人手数料が必要(財産額に応じる)
検認不要(公証人が関与しているため形式的争いがない)

費用と手間はかかりますが、最も確実性が高く争いを生みにくい方式です。原本が公証役場で保管されるため、相続開始後すぐに遺言を執行できます。

秘密証書遺言は、遺言者が遺言書を作成して封印し、それを公証人と証人2人以上の前で「自分の遺言である」と申述する方式です。遺言の内容を秘密にしたまま、その存在だけを公証する仕組みです。

項目内容
本文パソコン作成可・代筆も可(ただし署名は遺言者本人の自書)
押印必要(封印用の印と本文の印は同一でなければならない)
証人2人以上必須
保管遺言者本人が保管(公証役場では保管しない)
検認必要

実務での利用例は多くありませんが、試験ではしばしば「秘密証書遺言は検認不要」という誤った選択肢で出題されます。

項目自筆証書遺言公正証書遺言秘密証書遺言
本文の作成全文自書公証人が作成パソコン・代筆可
署名自書遺言者・公証人・証人が署名遺言者の自書
押印必要必要必要(本文・封印同一印)
証人不要2人以上2人以上
原本の保管自宅または法務局公証役場自宅
費用原則かからない公証人手数料1.1万円程度の定額
検認必要(法務局保管なら不要)不要必要

3つの遺言方式 — 自筆証書・公正証書・秘密証書の証人と検認の比較

検認とは、家庭裁判所が遺言書の状態(用紙・記載内容・日付・署名押印など)を確認して保全する手続きです。遺言書を発見した相続人や保管者は、遅滞なく家庭裁判所に提出して検認を請求しなければなりません。

検認は遺言の有効・無効を判定するものではなく、あくまでその時点での遺言書の状態を確認する手続きにすぎませんが、検認を怠ると過料の対象となります。封印された遺言書は、家庭裁判所で相続人立会いの下でしか開封できません

検認が不要なのは、公正証書遺言と、法務局に保管された自筆証書遺言の2つだけです。

試験で出るポイント

「自筆証書遺言の財産目録はパソコン作成・通帳コピー可(ただし各頁に署名押印必要)」「公正証書遺言は証人2人以上+検認不要」「公正証書以外でも、法務局保管の自筆証書は検認不要」の3点が頻出ポイント。

遺言がない場合、または遺言があっても全財産を網羅していない場合は、相続人全員で遺産分割協議を行います。協議の成立には、相続人全員の参加全員一致が必要です。1人でも欠けたまま行った協議や、反対者がいる協議は無効となります。

協議の場は対面でなくてもよく、メールや電話、書面のやり取りで意見をまとめても構いません。ただし最終的に決まった内容は遺産分割協議書として書面化し、相続人全員が署名・実印で押印します。

遺産分割協議書は、誰がどの財産を取得するかを明記した書面で、不動産の名義変更(相続登記)や預貯金の解約手続き、相続税申告に必要となる重要書類です。決まった様式はありませんが、次のような事項を記載するのが一般的です。

  • 被相続人の氏名・本籍・最後の住所・死亡日
  • 相続人全員の氏名・住所
  • 取得財産の特定(不動産は登記事項に従って正確に、預貯金は金融機関名・支店名・口座番号など)
  • 「誰が何を取得するか」の明確な記載
  • 全員の署名と実印による押印(印鑑証明書を添付)

協議成立後に新たな財産が発見された場合は、その財産について改めて協議すれば足ります(協議全体をやり直す必要はありません)。

法定相続分や遺言と異なる分割も自由

Section titled “法定相続分や遺言と異なる分割も自由”

繰り返しになりますが、全員の合意があれば法定相続分や遺言の指定と異なる分割も可能です。たとえば、配偶者と子2人が「配偶者がすべての不動産を取得し、預貯金は子で分ける」と合意すれば、それは有効な分割となります(ただし遺贈・遺留分の関係で第三者が絡む場合は別の検討が必要)。

相続が発生したとき、相続人が取れる選択肢は次の3つです。

選択内容申述の期限
単純承認プラス・マイナス両方の財産をすべて引き継ぐ期限内に他の選択をしなければ自動的に単純承認
限定承認プラスの財産の限度内でマイナスを引き継ぐ3ヶ月以内相続人全員が共同で家庭裁判所に申述)
相続放棄プラスもマイナスも一切引き継がない3ヶ月以内各人単独で家庭裁判所に申述)

期限の起算点は、いずれも「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3ヶ月以内です。この期間を熟慮期間と呼びます。

期間内に何の手続きもしなければ自動的に単純承認したものとみなされる(法定単純承認)ため、借金が多く相続したくないときは早めの放棄手続きが必要です。

試験で出るポイント

「相続放棄も限定承認も3ヶ月以内」「限定承認は全員共同でしか申述できない」「相続放棄は各人単独で申述できる」の3点はセットで覚えましょう。なお、相続税の申告期限は10ヶ月以内で、これとは別の期限です。

最後に、相続発生から遺産分割完了までの一連の流れを時系列で整理します。

時点主な手続き期限
相続発生被相続人の死亡
速やかに死亡届の提出7日以内
遺言の確認自筆・秘密の場合は家庭裁判所に検認申立て速やかに
相続人・相続財産の調査戸籍謄本収集・財産目録作成
単純承認・限定承認・放棄の判断家庭裁判所への申述(限定承認・放棄)3ヶ月以内
被相続人の準確定申告所得税の申告納付4ヶ月以内
遺産分割協議相続人全員で協議し、遺産分割協議書を作成(期限の定めなし、ただし税申告との関係で10ヶ月以内が望ましい)
相続税の申告納付被相続人の住所地の税務署10ヶ月以内
名義変更不動産登記、預貯金解約 等

試験で出るポイント(総まとめ)

Section titled “試験で出るポイント(総まとめ)”

試験で出るポイント

  • 自筆証書遺言:全文・日付・氏名を自書+押印財産目録のみPC・コピー可(各頁署名押印)。
  • 公正証書遺言:証人2人以上、原本は公証役場に保管、検認不要
  • 秘密証書遺言:本文はPC・代筆可だが署名は自書証人2人以上検認必要
  • 検認不要なのは公正証書遺言法務局保管の自筆証書遺言のみ。
  • 遺産分割協議は相続人全員参加・全員一致。全員合意なら法定相続分・遺言と異なる分割も可能。
  • 相続放棄・限定承認は3ヶ月以内。限定承認は全員共同で。

自筆証書遺言は、遺言者が遺言の全文・日付・氏名を自書し押印して作成する。ただし、添付する財産目録については、パソコンで作成したり通帳のコピーを添付したりすることも認められる。次の記述の正誤を判定せよ。

解答

正解:○

2019年の民法改正により、自筆証書遺言に添付する財産目録については、自書要件が緩和され、パソコン作成や通帳・登記事項証明書のコピーでも認められるようになった。ただし、財産目録の各ページ(両面の場合は両面)に遺言者の署名・押印が必要である。本文(誰に何を相続させるかの本体部分)は依然として全文自書が必須である。

公正証書遺言は、遺言者が公証人に対して口授した内容に基づき公証人が作成するもので、証人2人以上の立会いが必要であり、相続開始後に家庭裁判所での検認を受ける必要がある。次の記述の正誤を判定せよ。

解答

正解:×

公正証書遺言には証人2人以上の立会いが必要、という前半は正しい。しかし、公正証書遺言は公証人が形式を整えて作成し原本を公証役場で保管するため、家庭裁判所の検認は不要である(民法1004条2項)。検認が必要なのは自筆証書遺言(自宅保管の場合)と秘密証書遺言。

公正証書遺言の作成にあたって、遺言者の推定相続人やその配偶者は証人になることができる。次の記述の正誤を判定せよ。

解答

正解:×

遺言の内容に利害関係を持つ者を証人から排除するため、推定相続人・受遺者・これらの配偶者・直系血族は公正証書遺言・秘密証書遺言の証人になれない(民法974条)。未成年者も証人になれない。

法務局における自筆証書遺言書保管制度を利用して保管された自筆証書遺言は、相続開始後に家庭裁判所での検認を受ける必要がない。次の記述の正誤を判定せよ。

解答

正解:○

2020年7月開始の自筆証書遺言書保管制度を利用して法務局に保管された自筆証書遺言は、遺言書原本が公的機関で保管・管理されるため改ざん等のおそれがなく、家庭裁判所の検認は不要とされている(遺言書保管法11条)。自宅保管の自筆証書遺言は依然として検認が必要。

被相続人の遺言があった場合、相続人全員の合意があっても、その遺言の指定する分割方法と異なる遺産分割をすることは認められない。次の記述の正誤を判定せよ。

解答

正解:×

相続人全員の合意があれば、遺言の指定や法定相続分と異なる遺産分割を行うことができる(民法907条)。ただし、遺言で受遺者として指定されている第三者がいる場合や、遺言執行者が指定されている場合などは、それらの者の同意も必要となる。

相続人が限定承認をしようとする場合、自己のために相続の開始があったことを知った時から原則として何ヶ月以内に、共同相続人のうち一人ずつが単独で家庭裁判所に申述することができる。次の記述の正誤を判定せよ。

解答

正解:×

期間(3ヶ月以内)は正しいが、限定承認は相続人全員が共同でしなければならない(民法923条)。1人でも単純承認や放棄をしたい相続人がいると、限定承認は選択できなくなる。なお、相続放棄は各人が単独で申述できる点と区別する必要がある。

秘密証書遺言は、遺言者が遺言書をパソコンで作成して封印し、公証人および証人の前で自己の遺言である旨を申述する方式の遺言であり、相続開始後に家庭裁判所での検認は不要である。次の記述の正誤を判定せよ。

解答

正解:×

秘密証書遺言の本文はパソコン作成や代筆が認められ、証人2人以上の立会いが必要である点は正しい。しかし、秘密証書遺言の遺言書本体は遺言者本人が保管するため、相続開始後に家庭裁判所の検認が必要である(民法1004条)。検認が不要なのは公正証書遺言と法務局保管の自筆証書遺言のみ。

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