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オプション取引(コール・プット)

オプション取引 は、株式・通貨・債券などの 原資産 を、あらかじめ定めた価格(権利行使価格)で、将来の特定日(または期間内)に 買う、または売る権利を売買する 取引です。「現物そのもの」ではなく「権利」を売買する点が、株式や債券の現物取引と大きく異なります。

オプション取引はデリバティブ(金融派生商品)の代表例で、先物取引・スワップ取引と並ぶ柱の一つです。FP3級では深い数理は問われませんが、コール・プットの違い買い手と売り手の損益の非対称性プレミアム(オプション料)の構造 の3点が必出です。本章ではこれらを順に整理します。

オプションとは「買う/売る権利」を売買する取引

Section titled “オプションとは「買う/売る権利」を売買する取引”

オプション取引の最大のポイントは、権利を持つ人(買い手)は権利を行使するかどうかを選べる ことです。原資産価格が自分にとって有利に動いていれば権利を行使し、不利なら権利を放棄して何もしない、という選択ができます。一方、権利の売り手 は買い手から権利行使を求められたら 応じる義務 があり、自分から取引を中止することはできません。

この「権利の買い手=選択できる」「権利の売り手=義務を負う」という非対称な構造を理解すると、後述する損益関係も自然に見えてきます。

コールオプションとプットオプション

Section titled “コールオプションとプットオプション”

オプションには2種類しかありません。コール買う権利)と プット売る権利)です。覚え方としては、英語の「call=呼ぶ=引き寄せる=買う」「put=置く=手放す=売る」とイメージするのが定番です。

種類定義買い手の動機売り手の動機
コールオプション原資産を権利行使価格で 買う権利価格上昇を見込む(買って高く売りたい)価格は上昇しないと予想(プレミアムを得たい)
プットオプション原資産を権利行使価格で 売る権利価格下落を見込む(高く売って安く買い戻したい)価格は下落しないと予想(プレミアムを得たい)

たとえば、現在1株3,000円のA社株について「権利行使価格3,000円のコールオプション」を買うと、満期時にA社株がいくらになっていても3,000円で買う権利が手に入ります。実際の株価が4,000円になっていれば3,000円で買って4,000円で売れば1,000円の利益、株価が2,000円になっていれば権利を放棄するだけで済みます。

オプションの権利を手に入れるために、買い手は売り手に対して対価を支払います。この対価が プレミアム(オプション料) です。プレミアムは契約成立時点で発生し、買い手から売り手に支払われ、その後は売り手のものとなります。仮に買い手が権利を行使せずに満期を迎えても、プレミアムは返ってきません。

このプレミアムこそが、買い手にとっての 最大損失額 であり、売り手にとっての 最大利益額 になります。

買い手と売り手の損益の非対称性

Section titled “買い手と売り手の損益の非対称性”

オプション取引で必ず問われるのが、買い手と売り手の損益が極めて非対称 である点です。これはオプション取引最大の特徴であり、現物の株式取引とは根本的に異なります。

立場利益の上限損失の上限心理
コールの買い手無限大(原資産価格は理論上どこまでも上昇しうる)プレミアムに限定(権利を放棄するだけ)価格上昇に賭ける
コールの売り手プレミアムに限定(受け取った対価が上限)無限大(買い手から権利行使されると差額を支払う義務)価格は上昇しないと見る
立場利益の上限損失の上限心理
プットの買い手権利行使価格まで(原資産価格が0円まで下落した場合の差額)プレミアムに限定価格下落に賭ける
プットの売り手プレミアムに限定権利行使価格まで(原資産価格が0円まで下落した場合の差額)価格は下落しないと見る

ポイントは、買い手の損失はプレミアムに限定 され、売り手の利益はプレミアムに限定 される、という対称的な構造です。一方で 買い手の利益と売り手の損失は限定されません(コールの場合は理論上「無限大」、プットの場合は原資産価格がゼロになるまで)。

コールオプション買い手のペイオフ — 損失はプレミアムまで、利益は理論上無限大

graph TD
    A[コールオプション 買い手] -->|権利行使| B{原資産価格 vs 権利行使価格}
    B -->|高い| C[利益 = 価格 - 行使価格 - プレミアム]
    B -->|低い| D[権利放棄 = 損失プレミアムに限定]
    E[コールオプション 売り手] -->|義務発生| F{原資産価格 vs 権利行使価格}
    F -->|高い| G[損失 = 価格 - 行使価格 - プレミアム 大きく拡大]
    F -->|低い| H[利益プレミアムを獲得]

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試験で出るポイント

「コールオプションの売り手の損失はプレミアムに限定される」という選択肢は 誤り です。プレミアムに限定されるのは 買い手の損失売り手の利益 です。「権利を持つ側=損失限定/義務を負う側=利益限定」とセットで覚えましょう。売り手は受け取ったプレミアムだけでは到底カバーできない損失を被る可能性があるため、初心者は買い手から始めるのが定石です。

プレミアム(オプション料)の金額は、本源的価値(本質的価値)時間的価値 の2つから成り立っています。

本源的価値 は、いまこの瞬間に権利を行使したらいくら得するか、という「内側の価値」です。

  • コールの本源的価値 = 原資産価格 − 権利行使価格(マイナスなら0)
  • プットの本源的価値 = 権利行使価格 − 原資産価格(マイナスなら0)

たとえば、原資産価格3,500円・権利行使価格3,000円のコールオプションなら、本源的価値は500円です。一方、原資産価格2,800円・権利行使価格3,000円のコールなら、いま行使すると損なので本源的価値は0円となります。本源的価値がゼロより大きい状態を イン・ザ・マネー(ITM)、ゼロの状態を アウト・オブ・ザ・マネー(OTM) と呼びます。

時間的価値 は、満期までに原資産価格が動いて権利行使価格に近づく/超える可能性に対する期待値、いわば「時間という未来への希望料」です。満期までの残存期間が長いほど高く、満期に近づくほど減少していきます。この減少を タイムディケイ(時間価値の減衰) と呼びます。

満期時点では将来への期待は消滅するので、時間的価値はゼロ になります。したがって満期日のプレミアムは本源的価値そのものになります。

オプションのプレミアムは、いくつかの要因で変動します。FP3級では「方向と理由」を押さえれば十分です。

要因コールへの影響プットへの影響理由
原資産価格の上昇プレミアム 上昇プレミアム 下落コールは「買う権利」が有利になり、プットは「売る権利」が不利に
残存期間 が長い上昇上昇期待を載せる時間(時間的価値)が長い
ボラティリティ(価格変動の大きさ)が大きい上昇上昇大きく動くほど権利行使される可能性が高まる
金利の上昇上昇下落行使までに資金を運用できる効果(コールは投資家有利)

試験で出るポイント

「残存期間が長くなるほどオプションのプレミアムは安くなる」という選択肢は 誤り です。残存期間が長いほど 時間的価値が大きく なるため、プレミアムも 高く なります。コール・プットいずれも同方向です。「残り時間が長い=チャンスが多い=価値が高い」と直感で覚えましょう。

試験で出るポイント(総まとめ):

  • コール=買う権利/プット=売る権利。call=呼ぶ=買う、put=置く=売る。
  • 買い手の損失と売り手の利益はプレミアムに限定売り手の損失と買い手の利益は限定されない(コールは理論上無限大)。
  • プレミアム=本源的価値+時間的価値。満期時には時間的価値はゼロ。
  • 残存期間が長いほど、ボラティリティが大きいほど、プレミアムは 高い(コール・プット共通)。

なお、FP3級ではここまでが基本論点です。先物取引・スワップ取引・通貨オプションなど、その他のデリバティブは深入りせず、まずはオプション取引の構造を完璧に整理しましょう。


オプション取引において、コールオプションは原資産を権利行使価格で 売る権利 を、プットオプションは 買う権利 を意味する。次の記述の正誤を判定せよ。

解答

正解:×

コール(call)=買う権利プット(put)=売る権利。記述は両者が逆になっているため誤り。「call=呼ぶ→引き寄せる→買う/put=置く→手放す→売る」と語感で覚えると取り違えにくい。

オプション取引においては、買い手の最大損失はプレミアム(オプション料)に限定されるが、売り手の最大利益もプレミアムに限定される。次の記述の正誤を判定せよ。

解答

正解:○

オプション取引の損益は非対称で、買い手は損失がプレミアムに限定(権利を放棄すれば済む)、売り手は利益がプレミアムに限定(買い手から権利行使を求められたら応じる義務がある)。一方、買い手の利益と売り手の損失には限定がなく、コールでは理論上無限大、プットでは原資産価格がゼロになるまでの差額となる。

A社株式を原資産とするコールオプションについて、買い手のペイオフに関する次の記述のうち、最も適切なもの はどれか。なお、プレミアムは100円、権利行使価格は3,000円とする。

① 満期時の株価が3,200円のとき、買い手は権利を放棄し、損失はプレミアム100円で確定する。 ② 満期時の株価が3,200円のとき、買い手の利益は1株あたり100円である(プレミアム控除後)。 ③ 満期時の株価が2,800円のとき、買い手は権利を行使し、1株あたり200円の損失となる。

解答

正解:②

権利行使価格3,000円のコールを保有しているので、満期時の株価3,200円なら権利を行使して3,000円で買い、市場で3,200円で売れば1株あたり200円の差益。プレミアム100円を控除して 純利益100円 となる(②正解)。①は3,200円なら行使するほうが得なので誤り。③は株価2,800円ならコールを行使する意味がなく 権利を放棄 し、損失はプレミアム100円に限定される(買い手の損失はプレミアムに限定)。

オプションのプレミアム(オプション料)は本源的価値と時間的価値から構成され、満期日には時間的価値はゼロとなる。次の記述の正誤を判定せよ。

解答

正解:○

プレミアム=本源的価値+時間的価値。時間的価値は「満期までに原資産価格が動く可能性への期待」を意味し、満期に近づくにつれて減少(タイムディケイ)していく。満期日には将来への期待が消滅するため時間的価値はゼロとなり、プレミアムは本源的価値そのものとなる。

他の条件が同一であれば、オプションの満期までの残存期間が長いほど、コールオプションのプレミアムは高くなるが、プットオプションのプレミアムは低くなる。次の記述の正誤を判定せよ。

解答

正解:×

残存期間が長いほど 時間的価値が大きく なるため、コール・プットの 両方 でプレミアムは高くなる。コールとプットで方向が分かれるのは「原資産価格の変動」と「金利」であり、「残存期間」と「ボラティリティ」は両者とも同方向(長い/大きいほどプレミアム高)。

権利行使価格3,000円のプットオプションについて、現在の原資産価格が2,500円であるとき、本源的価値(本質的価値)として最も適切なものはどれか。

① 0円 ② 500円 ③ 5,500円

解答

正解:②

プットオプションの本源的価値=権利行使価格 − 原資産価格(マイナスなら0)。3,000円 − 2,500円 = 500円。いまこの瞬間に権利を行使すると、市場で2,500円のものを3,000円で売却できるため500円得をする、という意味の価値。なお同条件のコールオプションなら、原資産価格2,500円<権利行使価格3,000円のため、いま行使すると損になり本源的価値は 0円(アウト・オブ・ザ・マネー)となる。

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