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経済・景気指標

金融資産運用を考えるうえで、まず押さえたいのが「いまの経済はどんな状態か」を測るものさし、すなわち経済・景気指標です。FP3級では、GDP景気動向指数日銀短観マネーストックといった代表的な統計について、「誰が」「何を対象に」「何のために」作成・公表しているのかを問う問題が頻出します。

数字そのものを暗記するのではなく、「指標が何を測ろうとしていて、誰が作っているのか」を理解しておけば、選択肢を消去法で絞り込めるようになります。本章では、初学者でも体系的に整理できる順番で代表指標を見ていきます。

GDP ── 国内で生み出された付加価値の合計

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GDP(Gross Domestic Product/国内総生産)は、一定期間(通常は1年または四半期)国内で生産された財・サービスの付加価値の合計を表す統計です。日本の場合、内閣府が四半期ごとに公表しています。「日本という場所で、この3か月間にどれだけの価値が生み出されたか」を金額で表した数字、と理解してください。

GDPと混同しやすい指標に、**GNI(Gross National Income/国民総所得)や旧称のGNP(国民総生産)**があります。両者の違いはシンプルです。

指標カウント基準例:日本人がアメリカで稼いだ所得
GDP(国内総生産)場所ベース(日本国内)含まれない
GNI(国民総所得)ベース(日本国民)含まれる

「Domestic(国内)か、National(国民)か」と読み替えれば取り違えにくくなります。

GDPには 名目GDP実質GDP の2種類があります。

  • 名目GDP ── その時点の物価で算出した、見たままの金額。
  • 実質GDP ── 物価変動の影響を取り除いた、本当の生産量を表す金額。

両者の関係は次の式で結びついています。

実質GDP=名目GDPGDPデフレーター×100\text{実質GDP} = \frac{\text{名目GDP}}{\text{GDPデフレーター}} \times 100

たとえば物価が上がっただけで生産量が変わらなければ、名目GDPは増えても実質GDPは増えません。「景気が本当に良くなっているか」を見るには、実質GDPを見るのが基本です。

試験で出るポイント

GDPは「国内」、GNI(GNP)は「国民」を対象とするという区別が頻出です。「日本人が海外で稼いだ所得はGDPに含まれる」は誤り。さらに、実質GDPは名目GDPから物価変動の影響を除いた値である点も押さえましょう。

景気動向指数 ── 景気の山と谷を量的にとらえる

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景気動向指数は、内閣府が毎月発表する統計で、生産・雇用・消費など景気に敏感に反応する複数の経済指標を統合し、景気の現状や先行きを総合的に判断するために使われます。

景気動向指数には2つの計算方式があり、それぞれ役割が異なります。

指標何を測るかどう読むか
CI(Composite Index/コンポジット・インデックス)景気変動の 大きさ・テンポ(量的な勢い)数値が上昇していれば景気拡張局面
DI(Diffusion Index/ディフュージョン・インデックス)景気の 各部門への波及度合い(広がり)50%超で景気拡張局面、50%未満で後退局面

CIは「景気がどれくらい強い勢いで動いているか」を量的に把握する指標、DIは「景気の良し悪しが多くの分野に広がっているか」を測る指標、とイメージしましょう。近年は CIが景気判断の中心 に使われています。

景気動向指数を構成する個別指標は、景気の動きに対する反応の早さで 先行系列・一致系列・遅行系列 の3グループに分類されます。

系列役割代表指標(FP3級で覚える例)
先行系列景気に 先んじて 動く新規求人数、新設住宅着工床面積、東証株価指数
一致系列景気と 同時に 動く鉱工業生産指数、有効求人倍率
遅行系列景気に 遅れて 動く完全失業率、法人税収入、家計消費支出(勤労者世帯)

「未来予測のために株価を見る」「失業率は景気が悪化してから増える」と、生活感覚と結びつけて覚えると忘れにくくなります。

試験で出るポイント

完全失業率は一致系列」という選択肢は誤りで、正しくは遅行系列です。「DIは景気変動の大きさ・テンポを表す」という選択肢も誤りで、これはCIの説明。CIとDIの役割を逆に書いた選択肢が定番のひっかけです。

景気動向指数の3系列 — 先行・一致・遅行系列の代表例と景気循環曲線

日銀短観 ── 企業に直接たずねるアンケート調査

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日銀短観(正式名称:全国企業短期経済観測調査)は、日本銀行四半期ごと(年4回)に行う、企業の業況判断や設備投資計画などについてのアンケート調査です。略称の「短観(たんかん)」で呼ばれることが多く、海外でも”Tankan”として知られています。

代表的な指標が業況判断DIで、「自社の業況は最近どうですか?」という質問に対して、「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた値で示されます。プラスなら景気が良いと感じる企業のほうが多い、マイナスなら悪いと感じる企業のほうが多い、と読みます。

ここで間違えやすいのが、企業物価指数との混同です。両者はまったく別物です。

指標作成主体何を測るか
日銀短観日本銀行企業の 景況感(アンケート)
企業物価指数日本銀行企業間で取引される 財の価格変動
消費者物価指数総務省消費者が購入する モノやサービスの価格変動

作成主体まで含めて押さえておくと、選択肢の正誤判定が楽になります。

マネーストックとマネタリーベース

Section titled “マネーストックとマネタリーベース”

最後に、世の中に出回るお金の量を測る2つの統計を整理します。名前が似ていて混乱しやすい論点ですが、**「誰が保有するお金か」**で区別できます。

マネーストックは、金融部門以外の経済主体(一般法人・個人・地方公共団体など)が保有している通貨量の残高を表します。日本銀行が公表しています。

身近なイメージで言えば、世の中の家計や企業の財布・預金口座の中にある「お金の総量」のことです。これが増えていれば、世の中で使える資金が潤沢、減っていれば不足、と読めます。

一方、マネタリーベースは、日本銀行が直接供給している通貨量で、具体的には日銀当座預金(金融機関が日銀に預けている預金)と世の中に流通している現金の合計です。「中央銀行が市中に注ぎ込んだ大本の資金」と理解しましょう。

指標主体何を測るか
マネーストック一般法人・個人・地方公共団体などが保有民間部門の手元にある通貨量
マネタリーベース日銀供給日銀当座預金+流通現金

日銀が金融政策で操作するのは主にマネタリーベースで、その結果としてマネーストックが変化していく、という関係性で覚えておくと、次章の金融政策の理解にもつながります。

試験で出るポイント

マネーストックは日本銀行が公表しますが、対象は一般法人・個人・地方公共団体などの民間部門が保有するお金です。「マネーストックは日銀が供給する通貨量」とする選択肢は誤り(それはマネタリーベース)。両者は名前が似ていますが、保有主体と供給主体が逆である点に注意しましょう。

ここまでに登場した代表指標を、作成主体・対象・公表頻度の3点で総まとめします。試験直前にはこの表の確認だけでも有効です。

指標作成・公表主体何を測るか公表頻度
GDP内閣府国内で生産された付加価値の合計四半期
景気動向指数(CI/DI)内閣府複数指標を統合した景気判断毎月
日銀短観日本銀行企業の景況感アンケート四半期(年4回)
企業物価指数日本銀行企業間取引財の価格変動毎月
消費者物価指数総務省消費者向け財・サービスの価格変動毎月
マネーストック日本銀行民間部門が保有する通貨量毎月
マネタリーベース日本銀行日銀が直接供給する通貨量毎月

試験で出るポイント

経済指標の問題は「作成主体・対象・指標名の組み合わせ」のすり替えで誤答肢を作る出題が中心です。「日銀短観で物価変動を調べる」「消費者物価指数を日銀が作成する」など、入れ替え型の選択肢に注意しましょう。


**国内総生産(GDP)**は、一定期間内に国内で新たに生み出された財・サービスの付加価値の合計額を示す指標で、日本では内閣府が四半期ごとに公表している。次の記述の正誤を判定せよ。

GDPには、日本人が海外の事業所等で得た所得も含まれる。

解答

正解:×

GDPは「Domestic(国内)」を対象とする指標で、日本国内で生み出された付加価値のみを計上する。日本人が海外で稼いだ所得はGNI(国民総所得)には含まれるが、GDPには含まれない。「国内」と「国民」の違いを取り違えさせる典型的なひっかけ。

景気動向指数のCI(コンポジット・インデックス)とDI(ディフュージョン・インデックス)に関する次の記述の正誤を判定せよ。

CIは景気の各経済部門への波及度合いを表し、DIは景気変動の大きさやテンポを量的に表す指標である。

解答

正解:×

CIとDIの役割がになっている。正しくは、CIが景気変動の大きさ・テンポを量的に把握する指標、DIが景気の各部門への波及度合い(広がり)を表す指標である。DIは50%を境に景気判断を行い、近年はCIが景気判断の中心に用いられている。

景気動向指数の採用系列に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

① 完全失業率は、景気の動きに先行して変化する先行系列に採用されている。 ② 東証株価指数は、景気の動きに先行して変化する先行系列に採用されている。 ③ 鉱工業生産指数は、景気の動きに遅れて変化する遅行系列に採用されている。

解答

正解:②

①の完全失業率は雇用が景気悪化のあとに悪化するため遅行系列。 ②の東証株価指数は将来の業績期待を織り込むため先行系列で正しい。 ③の鉱工業生産指数は実体経済と同時に動くため一致系列である。

日銀短観(全国企業短期経済観測調査)に関する次の記述の正誤を判定せよ。

日銀短観は、日本銀行が毎月公表する企業間の取引価格に関する指数で、企業物価指数とも呼ばれる。

解答

正解:×

日銀短観は、日本銀行が四半期ごとに企業に対して行う業況判断や設備投資計画などのアンケート調査であり、企業物価指数とは別物である。企業物価指数は同じく日本銀行が作成する企業間取引財の価格変動を表す指数で、「物価指数=価格、短観=景況感」と区別する。

通貨量に関する統計について、次の記述の正誤を判定せよ。

マネーストック統計は、日本銀行が金融機関等に直接供給する通貨量の残高を集計したものである。

解答

正解:×

これはマネタリーベースの説明である。マネーストックは、一般法人・個人・地方公共団体など金融機関を除く経済主体が保有する通貨量の残高を集計したもの。日本銀行が直接供給する通貨量(日銀当座預金+流通現金)はマネタリーベースであり、両者は対象が異なる。

物価指数に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

① 消費者物価指数は、日本銀行が毎月公表する。 ② 企業物価指数は、総務省が毎月公表する。 ③ 消費者物価指数は、家計が購入する財・サービスの価格変動を捉えた指数で、総務省が公表する。

解答

正解:③

消費者物価指数(CPI)総務省企業物価指数(CGPI)日本銀行が作成する。①と②は作成主体が逆になっているため誤り。物価関連の問題では、作成主体(総務省/日本銀行)と対象(消費者向け/企業間取引)の組み合わせが問われやすい。

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