自動車保険(自賠責・任意)
自動車を所有・運転する人にとって、事故のときに頼りになるのが 自動車保険 です。日本の自動車保険は、すべてのドライバーが加入を義務づけられている 自賠責保険(自動車損害賠償責任保険) と、自賠責ではカバーできない部分を補う 任意自動車保険 の2階建ての仕組みになっています。
この章では、自賠責保険の補償範囲と支払限度額、そして任意保険の主な5つの保険(対人・対物・人身傷害・搭乗者傷害・車両保険)の役割を整理します。「相手の損害」「自分の損害」「自分の車の損害」をどの保険でカバーするのか、対象を明確にすることが理解の鍵です。
自賠責保険 ── すべての車に強制加入の最低限保障
Section titled “自賠責保険 ── すべての車に強制加入の最低限保障”自賠責保険(正式名称:自動車損害賠償責任保険)は、自動車損害賠償保障法 に基づき、すべての自動車・原動機付自転車に加入が義務づけられた 強制保険 です。車検を受けるためには自賠責の有効期限が車検期間をカバーしている必要があり、無保険で公道を走らせることは法律で禁じられています。
自賠責は、交通事故の被害者を最低限救済するための制度なので、補償範囲はかなり限定されています。
自賠責の補償範囲は「対人賠償のみ」
Section titled “自賠責の補償範囲は「対人賠償のみ」”自賠責が補償するのは、他人をケガさせたり死亡させたりした場合の対人賠償 だけです。次のものは すべて自賠責の対象外 です。
- 物損(対物)の損害:相手の車・建物・ガードレール・ペットなど物への損害
- 運転者本人や同乗者のケガ(同居の家族なども一定範囲で対象外)
- 自分の車の損害
つまり、自賠責は「相手の人の身体」だけを守る保険であり、それ以外はすべて任意保険でカバーする必要があります。
試験で出るポイント
「自賠責保険は対人・対物の両方を補償する」という選択肢は 誤り です。自賠責は 対人賠償のみ、物損は 任意保険の対物賠償保険 でカバーすると押さえましょう。
自賠責の支払限度額
Section titled “自賠責の支払限度額”自賠責は、被害者1人あたりの支払限度額が法律で定められています。これは 被害者1人あたり であり、1事故あたりではありません(被害者が複数いれば人数分が支払われる)。
| 損害の種類 | 被害者1人あたりの支払限度額 |
|---|---|
| 死亡 | 3,000万円 |
| 傷害(ケガ) | 120万円 |
| 後遺障害 | 最大4,000万円(1級の場合) |
後遺障害は等級によって支払額が異なり、もっとも重い 1級で最大4,000万円、軽度の14級なら75万円といった具合に14段階に分かれています。
自賠責は損害保険会社の破綻時も100%補償
Section titled “自賠責は損害保険会社の破綻時も100%補償”通常の損害保険は、損害保険会社が破綻した場合 損害保険契約者保護機構 によって部分的に補償されます。たとえば自動車保険・火災保険の任意契約では、破綻後3カ月以内は100%、その後は80%補償が原則です。しかし、自賠責保険と地震保険は 公共性が高い ため、破綻時も 100%補償 される特別扱いとなっています。
試験で出るポイント
自賠責の支払限度額は 「死亡3,000万円・傷害120万円・後遺障害最大4,000万円」 の3点セットで暗記しましょう。「傷害150万円」「死亡4,000万円」のような数字違いがよく出題されます。また破綻時の補償について 自賠責・地震保険は100%補償 という点も頻出です。
任意自動車保険 ── 自賠責で足りない部分を補う
Section titled “任意自動車保険 ── 自賠責で足りない部分を補う”自賠責だけでは補償が不十分なので、ほぼすべてのドライバーは 任意自動車保険 にも加入します。任意保険は、何を補償するかで5つに大別できます。
| 保険の種類 | 補償される対象 | 補償される事故 |
|---|---|---|
| 対人賠償保険 | 他人(相手)の身体 | 自賠責の支払限度額を超える部分 |
| 対物賠償保険 | 他人の財物(車・建物・ペット等) | 物損事故 |
| 人身傷害補償保険 | 自分・同乗者 の身体 | 過失割合に関係なく実損額を補償 |
| 搭乗者傷害保険 | 搭乗者の身体 | 入通院・死亡・後遺障害(定額払い) |
| 車両保険 | 自分の車 | 事故・自然災害・盗難 |
それぞれを順に見ていきましょう。
対人賠償保険 ── 自賠責の上乗せ
Section titled “対人賠償保険 ── 自賠責の上乗せ”対人賠償保険 は、他人をケガさせたり死亡させたりして賠償責任を負ったときに、自賠責保険の支払限度額を超える部分 を補償する任意保険です。死亡事故では数億円の賠償判決が出ることもあるため、保険金額を 「無制限」 にしておくのが一般的です。
なお、自分の家族(同居の親族や配偶者など)への賠償は対人賠償保険の対象外です。
対物賠償保険 ── 物損は自賠責でカバーできない
Section titled “対物賠償保険 ── 物損は自賠責でカバーできない”対物賠償保険 は、他人の 財物(車・建物・ガードレール・ペット等) を壊して賠償責任を負ったときに保険金が支払われます。自賠責では物損は一切補償されないため、対物賠償は任意保険の中でも特に重要です。
人身傷害補償保険 ── 過失割合に関係なく自分の損害を満額補償
Section titled “人身傷害補償保険 ── 過失割合に関係なく自分の損害を満額補償”人身傷害補償保険 は、自動車事故で 被保険者本人や同乗者がケガをしたり死亡したりした場合 に、保険金額を上限として 実際の損害額 が支払われる保険です。最大の特徴は、過失割合に関係なく自分の損害が満額補償される ことです。
たとえば、信号無視の相手と衝突して自分にも30%の過失があった場合、相手からの賠償金は7割しか得られません。しかし人身傷害補償保険があれば、過失分を差し引かずに 自分の損害額を保険金額の範囲で全額 受け取れます。
試験で出るポイント
「人身傷害補償保険は、被保険者の過失割合分を差し引いた金額が保険金として支払われる」という選択肢は 誤り です。人身傷害は 過失割合にかかわらず実損額を補償 するのが特徴です(2024年5月 問10、2025年5月 問10など)。
搭乗者傷害保険 ── 定額払いの傷害保険
Section titled “搭乗者傷害保険 ── 定額払いの傷害保険”搭乗者傷害保険 は、契約車両に搭乗中の人(運転者・同乗者)が事故でケガ・死亡・後遺障害を負った場合に保険金が支払われる保険です。人身傷害補償保険と似ていますが、支払い方式が異なります。
| 保険 | 支払い方式 |
|---|---|
| 人身傷害補償保険 | 実損払い(実際の損害額を補償、保険金額が上限) |
| 搭乗者傷害保険 | 定額払い(部位・症状ごとに定められた金額を支払い) |
搭乗者傷害保険は、たとえば「入院1日5,000円」のように契約時に定められた金額が支払われるため、損害額の確定を待たずに早く受け取れる利点があります。両者は併用契約も可能です。
車両保険 ── 自分の車の損害を補償
Section titled “車両保険 ── 自分の車の損害を補償”車両保険 は、自分の車 が事故・盗難・自然災害などで損害を受けた場合に、修理費や車両時価額を補償する保険です。一般型(補償範囲広め)とエコノミー型(限定型・保険料安め)があり、補償範囲をどこまで広げるかで保険料が変わります。
自然災害は補償される?されない?
Section titled “自然災害は補償される?されない?”車両保険でやや混乱しやすいのが、自然災害の扱い です。
| 自然災害の種類 | 車両保険(標準) |
|---|---|
| 洪水・台風・高潮 | 補償対象 |
| 落雷 | 補償対象 |
| 雹(ひょう)災 | 補償対象 |
| 地震・噴火・津波 | 原則 対象外(特約で対応) |
火災保険と同じく、地震・噴火・津波は車両保険の標準補償外 です。津波で車が水没した場合は、車両保険の標準契約では補償されず、「地震・噴火・津波危険担保特約」を付けることで対応します。
試験で出るポイント
「車両保険では、台風による洪水で車が水没した場合は補償されないが、津波による水没は補償される」は 誤り です。実際は 逆で、洪水・台風は補償対象、地震・噴火・津波は原則対象外 です(2024年1月 問38)。
単独事故やガードレール衝突はどうなる?
Section titled “単独事故やガードレール衝突はどうなる?”たとえば、運転者が自損事故で電柱に衝突して自分がケガをした場合、自賠責も対人賠償保険も使えません(どちらも「他人」が対象のため)。このような単独事故では、人身傷害補償保険 や 搭乗者傷害保険 で自分のケガを、車両保険 で自分の車の損害を補償することになります。
graph TB
A[事故発生] --> B{誰の損害?}
B -->|相手の人| C[自賠責 + 対人賠償保険]
B -->|相手の物| D[対物賠償保険]
B -->|自分・同乗者の人| E[人身傷害補償保険<br/>搭乗者傷害保険]
B -->|自分の車| F[車両保険]
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自動車保険まとめ
Section titled “自動車保険まとめ”最後に、自動車保険の重要事項をまとめます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 自賠責保険の対象 | 対人賠償のみ(物損・自分の損害は対象外) |
| 自賠責の支払限度額 | 死亡 3,000万円 /傷害 120万円 /後遺障害最大 4,000万円 |
| 自賠責の根拠法 | 自動車損害賠償保障法(強制加入) |
| 自賠責の破綻時補償 | 100%補償(地震保険も同様) |
| 対人賠償保険 | 自賠責の支払限度額を 超える部分 を補償 |
| 対物賠償保険 | 物損(自賠責では補償されない領域) |
| 人身傷害補償保険 | 過失割合に関係なく 実損額を補償(実損払い) |
| 搭乗者傷害保険 | 部位・症状ごとに 定額払い |
| 車両保険 | 洪水・台風は 補償対象、地震・噴火・津波は 原則対象外(特約必要) |
試験で出るポイント
自動車保険の出題では、(1)自賠責は対人のみ・物損対象外、(2)自賠責の支払限度額(3,000万円・120万円・最大4,000万円)、(3)人身傷害は過失割合関係なく満額、(4)車両保険は地震・噴火・津波が標準対象外、の4つが鉄板論点です。
自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)は、対人賠償と対物賠償の両方を補償対象とする強制保険であり、自動車損害賠償保障法に基づいてすべての自動車に加入が義務づけられている。次の記述の正誤を判定せよ。
解答
正解:×
自賠責保険は 対人賠償のみ を補償する強制保険であり、対物(物損)は補償対象外 である。相手の車や建物などの物損損害は、任意の 対物賠償保険 でカバーする必要がある。
自賠責保険における被害者1人あたりの支払限度額は、死亡による損害については3,000万円、傷害による損害については120万円である。次の記述の正誤を判定せよ。
解答
正解:○
自賠責保険の支払限度額は被害者1人あたり 死亡3,000万円・傷害120万円・後遺障害は最大4,000万円(1級) と定められている(自動車損害賠償保障法施行令2条)。「傷害150万円」「死亡4,000万円」など数字違いの選択肢が頻出するので、3点セットで正確に暗記すること。
任意の自動車保険のうち、人身傷害補償保険は、被保険者の過失割合に関係なく、契約の保険金額を上限として実際の損害額が補償される。次の記述の正誤を判定せよ。
解答
正解:○
人身傷害補償保険 は、被保険者の 過失割合に関係なく実損額 を保険金額の範囲で補償する点が最大の特徴である。たとえば自分に30%の過失があっても、損害額が満額補償される。「過失分を差し引いた金額のみ補償」という選択肢は典型的な誤答パターンである。
自動車保険の車両保険(一般型)では、台風による洪水で車両が水没した場合は補償対象となるが、地震・噴火・津波による損害は原則として補償対象外であり、これらを補償するには特約の付帯が必要である。次の記述の正誤を判定せよ。
解答
正解:○
車両保険は 洪水・台風・高潮・落雷・雹災 などの自然災害は標準で補償対象だが、地震・噴火・津波は原則として対象外 である。これらをカバーするには「地震・噴火・津波危険担保特約」を付帯する必要がある。火災保険と同様の取り扱いと考えるとよい。
損害保険会社が破綻した場合、自賠責保険および地震保険の保険金は、損害保険契約者保護機構により補償割合80%で補償される。次の記述の正誤を判定せよ。
解答
正解:×
自賠責保険と地震保険は公共性が極めて高いため、損害保険契約者保護機構による補償は 100%補償 となる特別扱いである。一般の自動車保険・火災保険は破綻後3カ月以内は100%、その後は80%補償が原則だが、自賠責・地震は時期にかかわらず100%である。
次のうち、任意の自動車保険における 対物賠償保険 の補償対象として 最も適切なもの はどれか。
① 自損事故で電柱に衝突し、契約車両が損傷した。 ② 走行中の他人の車に追突し、相手方の車を破損させた。 ③ 同乗していた家族が事故でケガをして入院した。
解答
正解:②
対物賠償保険 は、他人の財物(車・建物・ガードレール等)を壊して賠償責任を負った場合に保険金が支払われる。①は自分の車の損害なので 車両保険、③は同乗者のケガなので 人身傷害補償保険・搭乗者傷害保険 でカバーされる。
搭乗者傷害保険と人身傷害補償保険は、いずれも契約車両に搭乗中の運転者および同乗者のケガ等を対象とするが、保険金の支払い方法において、搭乗者傷害保険は実損額を補償する実損払いであり、人身傷害補償保険は部位・症状ごとに定められた金額を支払う定額払いである。次の記述の正誤を判定せよ。
解答
正解:×
両者の支払い方式は 逆 である。人身傷害補償保険 は実際の損害額を補償する 実損払い、搭乗者傷害保険 は部位・症状ごとの 定額払い が基本である。「人身=実損払い/搭乗者=定額払い」と覚えること。