システム構成
システム構成とは
Section titled “システム構成とは”情報システムを構築するとき、「どのようにコンピュータを組み合わせて動かすか」という設計方針をシステム構成と呼びます。目的に応じてさまざまな構成方法があり、ITパスポート試験ではこの分野から多くの問題が出題されます。
クライアントサーバシステム
Section titled “クライアントサーバシステム”クライアントサーバシステムは、サービスを要求する側(クライアント)とサービスを提供する側(サーバー)に役割を分けたシステム構成です。
たとえば、私たちがWebブラウザ(クライアント)でホームページを閲覧するとき、Webサーバーにページのデータを要求し、サーバーがそのデータを返します。このように「要求する側」と「応答する側」に分かれる仕組みがクライアントサーバシステムです。
クライアントサーバシステムでは、処理をクライアントとサーバーに分担するため、サーバーの負荷を軽減できるメリットがあります。応答時間やスループットなどの性能指標についてはシステムの性能で解説しています。
Webシステム
Section titled “Webシステム”Webシステムは、クライアントサーバシステムの一種で、クライアント側にWebブラウザを使うシステム構成です。専用のソフトウェアをインストールする必要がなく、Webブラウザさえあれば利用できるため、導入・運用のコストを抑えられます。
インターネットバンキングやオンラインショッピングなど、現代の多くのサービスはWebシステムとして構築されています。
ピアツーピア(P2P)
Section titled “ピアツーピア(P2P)”**ピアツーピア(P2P)**は、クライアントサーバシステムとは異なり、接続されたコンピュータ同士が対等な立場で通信を行うシステム構成です。「ピア(peer)」は「対等な者」という意味です。
P2Pでは、各コンピュータがサーバーにもクライアントにもなれます。ファイル共有ソフトやビデオ通話サービスなどで利用されています。
| 構成 | 特徴 |
|---|---|
| クライアントサーバシステム | 役割が明確(要求する側と応答する側)、管理しやすい |
| ピアツーピア(P2P) | 対等な関係、サーバー不要でコストが低い |
シンクライアント
Section titled “シンクライアント”シンクライアントとは、クライアント側のコンピュータには最低限の機能だけを持たせ、ほとんどの処理やデータ管理をサーバー側で行う仕組みです。「シン(thin)」は「薄い・軽い」という意味で、クライアントの機能を「薄く」していることを表しています。
シンクライアントでは、クライアント端末にデータを保存しないため、端末の紛失や盗難による情報漏えいのリスクを大幅に減らせます。企業のセキュリティ対策として導入が進んでいます。
VDI(仮想デスクトップ基盤)
Section titled “VDI(仮想デスクトップ基盤)”VDI(Virtual Desktop Infrastructure:仮想デスクトップ基盤)は、シンクライアントを実現する代表的な技術です。サーバー上に仮想的なデスクトップ環境を用意し、利用者はネットワーク経由でその画面を操作します。
VDIを導入すると、利用者はどの端末からでも同じデスクトップ環境を利用でき、データはすべてサーバーに保存されるため、セキュリティとモバイルワークの両立が可能になります。
試験で出るポイント
シンクライアント・VDIは「端末にデータを残さない=セキュリティ向上」というメリットが問われます。
仮想化(サーバー仮想化)
Section titled “仮想化(サーバー仮想化)”仮想化(サーバー仮想化)とは、1台の物理的なサーバーの上に、ソフトウェアの力で複数の仮想的なサーバーを作り出す技術です。それぞれの仮想サーバーは独立したコンピュータのように動作し、異なるOS(オペレーティングシステム)を同時に動かすこともできます。
仮想化の最大のメリットは、物理サーバーのリソース(CPU・メモリ・ストレージ)を効率よく使えることです。1台のサーバーで複数の役割を担えるため、サーバーの台数を減らし、コストや消費電力を削減できます。
仮想化の3つの方式
Section titled “仮想化の3つの方式”仮想化にはいくつかの方式があり、ITパスポート試験では以下の3つを区別できるようにしておきましょう。
ハイパーバイザー型仮想化は、物理サーバーのハードウェア上に「ハイパーバイザー」と呼ばれる専用ソフトウェアを直接インストールし、その上で複数のVM(仮想マシン)を動かす方式です。ホストOSが不要なため、オーバーヘッド(余分な処理負荷)が少なく、性能面で優れています。企業のサーバー環境で最も広く使われている方式です。
ホスト型仮想化は、Windows や macOS などの既存のOS(ホストOS)の上に仮想化ソフトウェアをインストールし、その上でVMを動かす方式です。手軽に導入できますが、ホストOSを経由する分、ハイパーバイザー型より性能が劣ります。個人の開発環境や検証用途でよく使われます。
コンテナ型仮想化は、OS上に「コンテナ」と呼ばれる軽量な実行環境を作る方式です。VMのようにOS全体を仮想化するのではなく、アプリケーションの実行に必要な部分だけを隔離するため、起動が速く、リソースの消費も少ないのが特長です。
| 方式 | 特徴 | 用途例 |
|---|---|---|
| ハイパーバイザー型 | ホストOS不要、高性能 | 企業のサーバー統合 |
| ホスト型 | 既存OSの上で手軽に導入 | 開発・検証環境 |
| コンテナ型 | 軽量・高速起動、リソース効率が高い | Webサービスの運用 |
試験で出るポイント
仮想化は「1台の物理サーバーで複数のOS・サーバー機能を動かせる」「リソースの有効活用」が定番の出題ポイントです。
ライブマイグレーション
Section titled “ライブマイグレーション”ライブマイグレーションとは、稼働中の仮想マシン(VM)を、サービスを停止させることなく別の物理サーバーへ移動させる技術です。
たとえば、物理サーバーのメンテナンスが必要なとき、ライブマイグレーションを使えば、その上で動いているVMを別のサーバーに移してからメンテナンスできるため、サービスの中断を防げます。
なお、マイグレーションは「移行」を意味する広い用語で、古いシステムから新しいシステムへの移行全般を指します。ライブマイグレーションはその中でも「稼働中のまま移動する」点が特徴です。
試験で出るポイント
ライブマイグレーションは「稼働中のまま別のハードウェアへ移動」がキーワードです。「ライブ=生きたまま」と覚えましょう。
デュアルシステムとデュプレックスシステム
Section titled “デュアルシステムとデュプレックスシステム”システムの信頼性を高めるための構成として、デュアルシステムとデュプレックスシステムがあります。名前が似ていますが、仕組みが異なります。
デュアルシステム
Section titled “デュアルシステム”デュアルシステムは、2つのシステムで同じ処理を同時に実行し、結果を照合(クロスチェック)する構成です。一方のシステムに障害が発生しても、もう一方がそのまま処理を継続できます。
信頼性は非常に高いですが、2台で同じ処理を行うためコストが高くなります。航空管制システムなど、障害が許されない分野で採用されています。稼働率の計算方法についてはシステムの信頼性で解説しています。
デュプレックスシステム
Section titled “デュプレックスシステム”デュプレックスシステムは、現用系(メインで稼働するシステム)と待機系(障害時に備えて待機するシステム)の2台構成です。通常は現用系だけが処理を行い、障害が発生すると待機系に切り替えます。
デュアルシステムとの違いは、待機系は普段は同じ処理を行っていない(または別の処理をしている)点です。コストを抑えつつ信頼性を確保できます。
| 構成 | 稼働方式 | コスト | 信頼性 |
|---|---|---|---|
| デュアルシステム | 2台で同じ処理を同時実行・結果を照合 | 高い | 非常に高い |
| デュプレックスシステム | 現用系+待機系、障害時に切り替え | 比較的低い | 高い |
試験で出るポイント
「2台で同じ処理を同時に行う=デュアルシステム」「現用系+待機系=デュプレックスシステム」の違いは頻出です。「デュアル=二重に動く」「デュプレックス=予備を待たせる」と整理しましょう。
クラスタ(クラスタリング)
Section titled “クラスタ(クラスタリング)”クラスタ(クラスタリング)とは、複数のコンピュータをネットワークで接続し、あたかも1台の高性能なコンピュータであるかのように動作させる技術です。「クラスタ(cluster)」は「房・集団」という意味です。
クラスタリングの主な目的は2つあります。
- 高可用性:1台が故障しても他のコンピュータが処理を引き継ぐ
- 高性能:複数台で処理を分担し、全体の処理能力を向上させる
グリッドコンピューティング
Section titled “グリッドコンピューティング”グリッドコンピューティングは、インターネットなどのネットワークを通じて、地理的に離れた多数のコンピュータの余っている計算能力を集めて、大規模な計算処理を行う技術です。
クラスタリングが同じ場所にあるコンピュータを束ねるのに対し、グリッドコンピューティングは世界中に分散したコンピュータの遊休リソースを活用する点が特徴です。
ブレードサーバー
Section titled “ブレードサーバー”ブレードサーバーとは、CPU・メモリなどの主要部品を1枚の薄い基板(ブレード)にまとめ、専用の筐体(エンクロージャ)に複数枚差し込んで使うサーバーです。電源や冷却装置を共有するため、省スペース・省電力で多数のサーバーを運用できます。
データセンターのように限られたスペースで大量のサーバーを運用する場面で活用されています。
NAS(Network Attached Storage)は、ネットワークに直接接続して使うファイルサーバー専用の記憶装置です。LANに接続するだけで、複数のコンピュータからファイルを共有できます。
家庭やオフィスで「みんなでファイルを共有したい」というときに手軽に導入できる記憶装置として普及しています。
RAID ── ディスクの冗長化技術
Section titled “RAID ── ディスクの冗長化技術”RAID(Redundant Array of Independent Disks)は、複数のハードディスクを組み合わせて、データの保護や性能の向上を図る技術です。ITパスポート試験では、以下の3つのRAIDレベルがよく出題されます。
RAID0(ストライピング)
Section titled “RAID0(ストライピング)”RAID0は、データを複数のディスクに分散して書き込む方式で、ストライピングと呼ばれます。複数のディスクに同時に読み書きするため、処理速度が向上します。ただし、冗長性(データの保護機能)はありません。1台でもディスクが故障するとデータが失われます。
RAID1(ミラーリング)
Section titled “RAID1(ミラーリング)”RAID1は、同じデータを2台のディスクに同時に書き込む方式で、ミラーリングと呼ばれます。一方のディスクが故障しても、もう一方にまったく同じデータが残っているため、データを失いません。ただし、実際に使える容量はディスク1台分になります。
RAID5(パリティ分散)
Section titled “RAID5(パリティ分散)”RAID5は、データとともにパリティ(誤り訂正用のデータ)を複数のディスクに分散して書き込む方式です。3台以上のディスクで構成し、1台が故障してもパリティ情報から元のデータを復元できます。
RAID5では、ディスクn台のうち1台分がパリティに使われるため、実際に使える容量は**(n−1)台分**になります。
RAID容量の比較
Section titled “RAID容量の比較”| RAIDレベル | 方式 | ディスクn台の利用可能容量 | 耐障害性 |
|---|---|---|---|
| RAID0 | ストライピング | n台分(全容量) | なし |
| RAID1 | ミラーリング | 1台分 | 1台故障まで |
| RAID5 | パリティ分散 | (n−1)台分 | 1台故障まで |
試験で出るポイント
RAID容量の計算問題が出題されます。たとえば「1TBのディスク4台でRAID5を構成すると、利用可能容量は?」→ 答えは(4−1)×1TB=3TB です。RAID0はn台合計、RAID1は1台分、RAID5は(n−1)台分と覚えましょう。
試験で出るポイント
クラスタリングはスケールアウト(台数を増やして処理能力を高める方法)の代表例です。スケールアウトとスケールアップの違いは「システムの性能」で詳しく解説しています。
過去問で実力チェック
Section titled “過去問で実力チェック”過去問に挑戦
Q. サーバの仮想化技術において,あるハードウェアで稼働している仮想化されたサーバを停止することなく別のハードウェアに移動させ,移動前の状態から引き続きサーバの処理を継続させる技術を何と呼ぶか。
- ア ストリーミング
- イ ディジタルサイネージ
- ウ プラグアンドプレイ
- エ ライブマイグレーション
解答(令和元年)
正解: エ
Q. サーバ仮想化の特長として,適切なものはどれか。
- ア 1台のコンピュータを複数台のサーバであるかのように動作させることができるので,物理的資源を需要に応じて柔軟に配分することができる。
- イ コンピュータの機能をもったブレードを必要な数だけ筐体に差し込んでサーバを構成するので,柔軟に台数を増減することができる。
- ウ サーバを構成するコンピュータを他のサーバと接続せずに利用するので,セキュリティを向上させることができる。
- エ サーバを構成する複数のコンピュータが同じ処理を実行して処理結果を照合するので,信頼性を向上させることができる。
解答(令和元年)
正解: ア
Q. サーバの性能向上策に関する次の記述中のa,bに入れる字句の適切な組合せはどれか。
あるシステムで,処理件数の増加に伴い,サーバの処理時間の増大が問題となっている。サーバの処理性能の向上策として,サーバの台数を増やして並行処理させて対応することを [ a ] という。サーバ自体を高性能のものに交換したり,CPUや主記憶などをより性能の良いものに替えたりなどして対応することを [ b ] という。
| a | b | |
|---|---|---|
| ア | スケールアウト | スケールアップ |
| イ | スケールアップ | スケールアウト |
| ウ | スケールアップ | ダウンサイジング |
| エ | ダウンサイジング | スケールアップ |
- ア スケールアウト / スケールアップ
- イ スケールアップ / スケールアウト
- ウ スケールアップ / ダウンサイジング
- エ ダウンサイジング / スケールアップ
解答(令和2年)
正解: ア
Q. 記述 a~d のうち,クライアントサーバシステムの応答時間を短縮するための施策として,適切なものだけを全て挙げたものはどれか。
a クライアントとサーバ間の回線を高速化し,データの送受信時間を短くする。
b クライアントの台数を増やして,クライアントの利用待ち時間を短くする。
c クライアントの入力画面で,利用者がデータを入力する時間を短くする。
d サーバを高性能化して,サーバの処理時間を短くする。
- ア a,b,c
- イ a,d
- ウ b,c
- エ c,d
解答(令和2年)
正解: イ
Q. ネットワークに接続した複数のコンピュータで並列処理を行うことによって,仮想的に高い処理能力をもつコンピュータとして利用する方式はどれか。
- ア ウェアラブルコンピューティング
- イ グリッドコンピューティング
- ウ モバイルコンピューティング
- エ ユビキタスコンピューティング
解答(令和3年)
正解: イ
Q. 1台の物理的なコンピュータ上で,複数の仮想サーバを同時に動作させることによって得られる効果に関する記述 a〜c のうち,適切なものだけを全て挙げたものはどれか。
a 仮想サーバ上で,それぞれ異なるバージョンのOSを動作させることができ,物理的なコンピュータのリソースを有効活用できる。
b 仮想サーバの数だけ,物理的なコンピュータを増やしたときと同じ処理能力を得られる。
c 物理的なコンピュータがもつHDDの容量と同じ容量のデータを,全ての仮想サーバで同時に記録できる。
- ア a
- イ a,c
- ウ b
- エ c
解答(令和4年)
正解: ア
Q. 容量が500GバイトのHDDを2台使用して,RAID0,RAID1を構成したとき,実際に利用可能な記憶容量の組合せとして,適切なものはどれか。
| RAID0 | RAID1 | |
|---|---|---|
| ア | 1Tバイト | 1Tバイト |
| イ | 1Tバイト | 500Gバイト |
| ウ | 500Gバイト | 1Tバイト |
| エ | 500Gバイト | 500Gバイト |
- ア 1Tバイト / 1Tバイト
- イ 1Tバイト / 500Gバイト
- ウ 500Gバイト / 1Tバイト
- エ 500Gバイト / 500Gバイト
解答(令和5年)
正解: イ
Q. Webサービスなどにおいて,信頼性を高め,かつ,利用者からの多量のアクセスを処理するために,複数のコンピュータを連携させて全体として一つのコンピュータであるかのように動作させる技法はどれか。
- ア クラスタリング
- イ スプーリング
- ウ バッファリング
- エ ミラーリング
解答(令和5年)
正解: ア
Q. 障害に備えるために,4台のHDDを使い,1台分の容量をパリティ情報の記録に使用するRAID5を構成する。1台のHDDの容量が1Tバイトのとき,実効データ容量はおよそ何バイトか。
- ア 2T
- イ 3T
- ウ 4T
- エ 5T
解答(令和6年)
正解: イ
