業務改善及び問題解決
業務改善の出発点 ── ITの活用で何が変わるのか
Section titled “業務改善の出発点 ── ITの活用で何が変わるのか”日々の仕事の中には、手作業で行われている定型的な業務が数多く存在します。たとえば、Excelで集計した売上データを別のシステムに転記する作業、毎月届く請求書の内容を確認して経理システムに入力する作業など、決まった手順を繰り返すだけの業務は少なくありません。
こうした身近な業務にコンピュータやネットワークのITを効率的に活用することで、作業のスピードが上がるだけでなく、人為的なミスの削減や、より付加価値の高い仕事に人材を振り向けることが可能になります。とくに注目すべきは、工場などの現場作業だけでなく、オフィスで行われる事務処理や企画、管理業務といったホワイトカラーを含む業務の効率化が図れるという点です。
試験で出るポイント
「ITの活用によってホワイトカラーの業務も効率化できる」という考え方は、試験で選択肢の正誤を判断する際に重要です。IT活用の対象が製造現場だけではないことを押さえておきましょう。
業務改善に必要な力 ── 分析力と思考力
Section titled “業務改善に必要な力 ── 分析力と思考力”業務を改善するためには、まず「何が問題なのか」を正しく見つけ出す必要があります。そのために求められるのが、業務改善及び問題解決に向けた分析力、思考力です。
分析力とは、現在の業務の状況を客観的なデータや事実にもとづいて読み解く力のことです。「なんとなく遅い気がする」という感覚ではなく、「この工程に平均3日かかっており、全体の処理時間の40%を占めている」というように、具体的な数値で把握することが重要です。
思考力とは、分析の結果から問題の原因を突き止め、解決策を考え出す力のことです。たとえば「処理時間が長い原因は手作業による転記にある」と特定し、「この部分をシステム連携で自動化すれば処理時間を半減できる」という改善策を導き出すような力を指します。
この2つの力は互いに補い合う関係にあります。データを集めても考える力がなければ改善策は生まれませんし、いくら考えても根拠となるデータがなければ的外れな対策になりかねません。
業務プロセスの把握と問題発見
Section titled “業務プロセスの把握と問題発見”業務改善の第一歩は、現在の業務がどのような流れで行われているかを「見える化」することです。ここで活用されるのが、業務フローやE-R図です。
業務フローは、業務の手順を図で表したものです。「誰が」「どの順番で」「どんな作業をするか」が一目でわかるため、作業の重複やムダな手順、ボトルネック(作業が滞留する箇所)を発見しやすくなります。
E-R図は、業務で扱うデータ同士の関係を表した図です。たとえば「顧客」と「注文」と「商品」の間にどんな関連があるかを図示することで、データの流れや管理方法に問題がないかを確認できます。
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title: 業務フロー分析による問題発見と改善
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graph TB
subgraph before ["改善前"]
direction TB
A1["担当者A<br>データ入力"]:::base --> B1["担当者B<br>転記作業(手作業)"]:::alert
B1 -->|"ボトルネック"| C1["担当者C<br>確認・修正"]:::base
C1 -->|"差し戻し"| A1
end
subgraph after ["改善後"]
direction TB
A2["担当者A<br>データ入力"]:::base --> S2["システム連携<br>(自動)"]:::primary
S2 --> C2["担当者C<br>確認"]:::base
end
before -->|"改善"| after
classDef base fill:#f8fafc,stroke:#94a3b8,stroke-width:1px,color:#333;
classDef primary fill:#eff6ff,stroke:#2563eb,stroke-width:2px,color:#1e40af;
classDef alert fill:#fef2f2,stroke:#dc2626,stroke-width:2px,color:#991b1b;
また、業務の現状を正しく把握するためには、表やグラフで表現された業務データを読み取る力も欠かせません。たとえば、月ごとの処理件数を棒グラフにすれば季節的な繁忙期が見えてきますし、エラー発生率を折れ線グラフにすれば特定の時期に問題が集中していることがわかるかもしれません。
このように、業務フローやE-R図などから業務プロセスを把握し、表やグラフで表現された業務データを読み取ることによって、問題点の発見及び改善を進めることができるのです。
試験で出るポイント
業務改善の手順として「業務フローで現状を可視化する → データを分析して問題点を見つける → 改善策を立てて実行する」という流れを理解しておきましょう。試験では、業務フローやグラフの読み取りに関する問題が出題されることがあります。
RPA ── 定型業務を自動化する技術
Section titled “RPA ── 定型業務を自動化する技術”業務改善の具体的な手段として近年注目されているのがRPA(Robotic Process Automation)です。
RPAとは、これまで人間がコンピュータ上で行っていた定型的な作業を、ソフトウェアのロボットに代行させる技術のことです。ここでいう「ロボット」とは、工場にあるような物理的なロボットではなく、パソコン上で動作するプログラム(ソフトウェアロボット)を指します。
RPAが得意とするのは、次のような作業です。
- データの転記(あるシステムの情報を別のシステムにコピーする)
- 定型的なメールの送信(条件に合致したら自動的にメールを作成・送信する)
- 帳票の作成(決まったフォーマットにデータを流し込んでレポートを作る)
- Webサイトからの情報収集(特定のサイトから定期的にデータを取得する)
たとえば、経理部門で毎日行われる「銀行の入出金明細をダウンロードして、会計システムに入力する」という作業をRPAで自動化すれば、担当者はその時間をより重要な分析業務に充てることができます。
一方で、RPAには向いていない作業もあります。人間の判断が必要な業務(クレーム対応など)や、手順が頻繁に変わる業務には不向きです。RPAは「ルールが明確で、繰り返し行われる作業」に適した技術であることを理解しておきましょう。
| 項目 | RPAに向いている業務 | RPAに向いていない業務 |
|---|---|---|
| 手順 | ルールが明確で一定 | 状況に応じて判断が必要 |
| 頻度 | 繰り返し行われる | 不定期・一度きり |
| データ | 構造化されたデータの処理 | 非定型なデータの解釈 |
| 具体例 | データ転記、帳票作成 | 交渉、創造的な企画立案 |
試験で出るポイント
RPAの定義として「人間がコンピュータ上で行っていた定型的な操作を、ソフトウェアで自動化する仕組み」という説明を正確に理解しましょう。AI(人工知能)との違いとして、RPAは「あらかじめ決められたルールに従って処理する」のに対し、AIは「自ら学習・判断する」点が異なります。
まとめ ── 業務改善の全体像
Section titled “まとめ ── 業務改善の全体像”業務改善は、次のようなステップで進めます。
- 現状の把握:業務フローやE-R図で業務プロセスを可視化する
- 問題の発見:表やグラフでデータを分析し、ボトルネックやムダを見つける
- 改善策の立案:分析力と思考力を使って具体的な解決策を考える
- 改善の実行:RPAの導入やシステム連携など、ITを活用して効率化を実現する
ITを活用した業務改善は、ホワイトカラーの業務を含むあらゆる業務に適用できます。試験対策としてだけでなく、将来の仕事にも直結する実践的な知識ですので、各用語の意味と関係をしっかり理解しておきましょう。
過去問で実力チェック
Section titled “過去問で実力チェック”過去問に挑戦
Q. RPA(Robotic Process Automation)の事例として,最も適切なものはどれか。
- ア 高度で非定型な判断だけを人間の代わりに自動で行うソフトウェアが,求人サイトにエントリーされたデータから採用候補者を選定する。
- イ 人間の形をしたロボットが,銀行の窓口での接客など非定型な業務を自動で行う。
- ウ ルール化された定型的な操作を人間の代わりに自動で行うソフトウェアが,インターネットで受け付けた注文データを配送システムに転記する。
- エ ロボットが,工場の製造現場で組立てなどの定型的な作業を人間の代わりに自動で行う。
解答(令和元年)
正解: ウ
Q. 人間が行っていた定型的な事務作業を,ソフトウェアのロボットに代替させることによって,自動化や効率化を図る手段を表す用語として,最も適切なものはどれか。
- ア ROA
- イ RPA
- ウ SFA
- エ SOA
解答(令和2年)
正解: イ
Q. RPA(Robotic Process Automation)の特徴として,最も適切なものはどれか。
- ア 新しく設計した部品を少ロットで試作するなど,工場での非定型的な作業に適している。
- イ 同じ設計の部品を大量に製造するなど,工場での定型的な作業に適している。
- ウ システムエラー発生時に,状況に応じて実行する処理を選択するなど,PCで実施する非定型的な作業に適している。
- エ 受注データの入力や更新など,PCで実施する定型的な作業に適している。
解答(令和3年)
正解: エ
Q. 企業でのRPAの活用方法として,最も適切なものはどれか。
- ア M&Aといった経営層が行う重要な戦略の採択
- イ 個人の嗜好に合わせたサービスの提供
- ウ 潜在顧客層に関する大量の行動データからの規則性抽出
- エ 定型的な事務処理の効率化
解答(令和5年)
正解: エ
Q. RPAが適用できる業務として,最も適切なものはどれか。
- ア ゲームソフトのベンダーが,ゲームソフトのプログラムを自動で改善する業務
- イ 従業員の交通費精算で,交通機関利用区間情報と領収書データから精算伝票を作成する業務
- ウ 食品加工工場で,産業用ロボットを用いて冷凍食品を自動で製造する業務
- エ 通信販売業で,膨大な顧客の購買データから顧客の購買行動に関する新たな法則を見つける業務
解答(令和6年)
正解: イ
Q. RPAに関する記述として,最も適切なものはどれか。
- ア 企業の一部の業務を外部の組織に委託することによって,自社のリソースを重要な領域に集中したり,コストの最適化や業務の高効率化などを実現したりする。
- イ 組立てや搬送などにハードウェアのロボットを用いることによって,工場の生産活動の自動化を実現する。
- ウ システムの利用者が,主体的にシステム管理や運用を行うことによって 利用者のITリテラシーの向上や,システムベンダーへの依存の軽減などを実現する。
- エ ホワイトカラーの定型的な事務作業を,ソフトウェアのロボットに代替させることによって,自動化や効率化を図る。
解答(令和7年)
正解: エ