業務分析と業務計画
業務の実態を把握したら、次は集めた情報を分析し、改善策や計画に結びつけるステップに進みます。この章では、業務分析に使われる代表的な手法と、データを効果的に伝えるためのグラフ・図表の可視化手法を学びます。
この章の位置づけ: ここでは「業務改善や計画立案に分析手法をどう使うか」に重点を置きます。相関・回帰分析の数理の基礎を先に整理したいときは 確率と統計、データの種類や標本抽出・BI など活用全体の流れを確認したいときは データ利活用 を参照してください。
業務分析手法
Section titled “業務分析手法”パレート図と ABC 分析
Section titled “パレート図と ABC 分析”パレート図は、項目を値の大きい順に並べた棒グラフと、その累積比率を示す折れ線グラフを組み合わせた図です。「どの項目が全体に大きな影響を与えているか」を一目で把握できます。
たとえば、コールセンターに寄せられるクレームの種類と件数を調べたとき、パレート図を作ると「配送の遅延」と「商品の不良」だけで全体の70%を占めていることがわかる、といった使い方をします。この場合、まずこの2つに集中して対策すれば、全体のクレーム件数を大幅に減らせます。
ABC 分析
Section titled “ABC 分析”ABC分析は、パレート図の考え方を活用し、項目を重要度に応じてA・B・Cの3つのグループに分類する手法です。
| グループ | 累積比率の目安 | 対応方針 |
|---|---|---|
| A(最重要) | 上位 約70% | 重点的に管理・改善する |
| B(重要) | 約70〜90% | 標準的に管理する |
| C(それ以外) | 約90〜100% | 簡易的に管理する |
たとえば、小売店が商品の売上高でABC分析を行うと、売上の大部分を占める少数の商品(Aグループ)に対して在庫を切らさないよう重点管理し、売上が小さい多数の商品(Cグループ)は必要最低限の管理にとどめる、といった判断ができます(期待値を使った判断手法は意思決定で解説)。
試験で出るポイント
ABC分析は「売上高の高い順に三つのグループに分類する」が定番の説明です(2021年春 問21で出題)。「3つの観点で分析する」のではなく「重要度で3グループに分ける」点に注意しましょう。
特性要因図(フィッシュボーンチャート)
Section titled “特性要因図(フィッシュボーンチャート)”特性要因図は、ある結果(特性)に対して、その原因(要因)を体系的に整理する図です。図の形が魚の骨に似ていることから、フィッシュボーンチャートとも呼ばれます。
右端に結果(問題)を置き、そこに向かって太い矢印(背骨)を引きます。背骨から枝分かれする大骨には「人」「方法」「設備」「材料」などの大分類を配置し、さらに各大骨から小骨として具体的な要因を書き出していきます。
特性要因図は、問題の原因を漏れなく洗い出すのに適しています。チームでブレーンストーミングを行いながら要因を追加していくと効果的です。
管理図は、製造工程などのプロセスが安定した状態にあるかどうかを時系列で監視するためのグラフです。
中心に中心線(CL:Center Line)を引き、その上下に上方管理限界線(UCL)と下方管理限界線(LCL)を設定します。測定値がこの管理限界線の範囲内に収まっていれば「工程は安定している」と判断し、限界線を超えたら「異常が発生している」と判断します。
たとえば、ペットボトルの内容量を製造ラインで定期的に計測し、管理図にプロットすることで、充填機の不調を早期に発見できます。
系統図は、目的を達成するための手段を段階的に展開し、ツリー状に整理する図です。左端に目的を置き、「そのためにはどうすればよいか?」を繰り返して右へ展開していきます。
たとえば「顧客満足度を向上させる」という目的に対して、「商品の品質を上げる」「サポート体制を強化する」などの手段を洗い出し、さらにそれぞれの手段を具体的なアクションに分解していきます。
PERT とクリティカルパス分析
Section titled “PERT とクリティカルパス分析”PERT(アローダイアグラム)
Section titled “PERT(アローダイアグラム)”PERT(Program Evaluation and Review Technique)は、プロジェクトの作業工程を矢印(アロー)と結合点で表現する手法です。作成される図をアローダイアグラムと呼びます。
各作業を矢印で表し、矢印の上に作業日数を記入します。作業間の依存関係(「Aが終わらないとBに着手できない」など)も図で表現できるため、プロジェクト全体のスケジュール管理に使われます。
クリティカルパス分析
Section titled “クリティカルパス分析”アローダイアグラムの中で、最も時間のかかる経路をクリティカルパスと呼びます。クリティカルパス上の作業が遅れると、プロジェクト全体の完了が遅れます。
graph LR
N1(("①")):::primary
N2(("②")):::primary
N3(("③")):::base
N4(("④")):::primary
N5(("⑤")):::primary
N1 ==>|"作業A(3日)"| N2
N2 ==>|"作業C(4日)"| N4
N4 ==>|"作業E(2日)"| N5
N1 -.->|"作業B(2日)"| N3
N3 -.->|"作業D(3日)"| N4
classDef base fill:#f8fafc,stroke:#94a3b8,stroke-width:1px,color:#333;
classDef primary fill:#eff6ff,stroke:#2563eb,stroke-width:2px,color:#1e40af;
classDef alert fill:#fef2f2,stroke:#dc2626,stroke-width:2px,color:#991b1b;
太線(①→②→④→⑤)がクリティカルパス(合計9日)。点線の経路(①→③→④→⑤)は合計7日で、2日の余裕(フロート)があります。
上の例では、①→②→④→⑤の経路が合計9日で最長となるため、これがクリティカルパスです。プロジェクト全体の最短完了日数は9日です。一方、①→③→④→⑤の経路は7日なので、作業Bや作業Dには2日の余裕(フロート)があります。
試験で出るポイント
PERT の問題では「クリティカルパスを求めよ」「プロジェクトの最短完了日数は何日か」という形式が定番です。すべての経路の所要日数を計算し、最も長い経路を見つけましょう。
回帰分析と最小二乗法
Section titled “回帰分析と最小二乗法”回帰分析は、2つの変数の間にある関係を数式で表し、一方の値からもう一方の値を予測する手法です。
たとえば「気温が上がるとアイスクリームの売上が増える」という関係があるとき、過去のデータから「気温がX度のとき、売上はおよそY個」という予測式を導くのが回帰分析です。
試験で出るポイント
「気温から販売量を推定する手法」として回帰分析が出題されています(2024年 問14)。「予測」「推定」というキーワードが出たら回帰分析を思い出しましょう。
回帰分析で予測式(回帰直線)を求める際に使われる計算手法が最小二乗法です。各データ点と予測直線との差(誤差)を二乗して合計した値が最小になるように直線を引きます。「なぜ二乗するのか」というと、誤差にはプラスとマイナスがあり、そのまま合計すると打ち消し合ってしまうためです。
相関と因果、擬似相関
Section titled “相関と因果、擬似相関”相関とは、2つのデータの間に「片方が増えるともう片方も増える(または減る)」という関連性が見られることです。しかし、相関があるからといって、必ずしも因果関係(原因と結果の関係)があるとは限りません。
たとえば「アイスクリームの売上が多い日は、水難事故も多い」というデータがあったとします。アイスの売上と水難事故には相関がありますが、アイスを買うことが水難事故の原因ではありません。両方とも「気温が高い」という共通の原因によって増えているだけです。このような見せかけの相関を擬似相関と呼びます。
graph TB TEMP["気温が高い<br>(真の原因)"]:::alert ICE["アイスの売上↑"]:::base ACC["水難事故↑"]:::base TEMP -->|"因果関係"| ICE TEMP -->|"因果関係"| ACC ICE -.-|"擬似相関<br>(因果関係なし)"| ACC classDef base fill:#f8fafc,stroke:#94a3b8,stroke-width:1px,color:#333; classDef primary fill:#eff6ff,stroke:#2563eb,stroke-width:2px,color:#1e40af; classDef alert fill:#fef2f2,stroke:#dc2626,stroke-width:2px,color:#991b1b;
試験で出るポイント
「相関関係があっても因果関係があるとは限らない」は重要な考え方です。データ分析の基本として押さえておきましょう。
図表・グラフによるデータ可視化
Section titled “図表・グラフによるデータ可視化”業務分析の結果を他者に伝えたり、データから傾向を読み取ったりするには、適切なグラフや図表を選ぶことが重要です。ここでは、代表的なグラフの種類と、それぞれの特徴・用途を整理します。
目的別グラフの選び方
Section titled “目的別グラフの選び方”| グラフの種類 | 特徴 | 適した用途 |
|---|---|---|
| 棒グラフ | 値の大きさを棒の長さで比較 | カテゴリ間の比較(売上の部門別比較など) |
| 折れ線グラフ | 値の変化を線で結ぶ | 時系列の推移(月別売上の変化など) |
| 円グラフ | 全体に対する割合を扇形で表示 | 構成比の把握(市場シェアなど) |
| 散布図 | 2つの変数の関係を点で表示 | 相関関係の把握(気温と売上など) |
| ヒストグラム | データの分布を棒で表示 | 度数分布の把握(テスト点数の分布など) |
| 箱ひげ図 | データの散らばりを箱と線で表示 | データのばらつき・外れ値の把握 |
| レーダーチャート | 複数の評価項目をクモの巣状に表示 | 多角的な評価の比較(製品評価など) |
| ヒートマップ | 値の大小を色の濃淡で表現 | 大量データの傾向把握(Webサイトの閲覧箇所など) |
散布図と相関
Section titled “散布図と相関”散布図は、2つの変数の関係を調べるとき、各データを点としてプロットするグラフです。点が右肩上がりに分布していれば正の相関(片方が増えるともう片方も増える)、右肩下がりなら負の相関、点がまとまりなくバラバラなら相関なしと判断します。
箱ひげ図は、データの分布を5つの数値(最小値・第1四分位数・中央値・第3四分位数・最大値)で要約して表すグラフです。箱の部分にデータの中央50%が入り、ひげの部分でデータ全体の範囲がわかります。複数のグループのデータ分布を並べて比較するのに便利です。
マトリックス図とクロス集計表
Section titled “マトリックス図とクロス集計表”マトリックス図は、行と列に異なる要素を配置し、その交差点に関係性を記号などで示す図です。たとえば「業務」と「担当者」をマトリックスにして、誰がどの業務を担当しているかを一覧化できます。
クロス集計表(分割表)は、2つ以上の項目でデータを分類し、それぞれの組み合わせに該当する件数や比率をまとめた表です。アンケート結果の分析などでよく使われます。
ロジックツリーとコンセプトマップ
Section titled “ロジックツリーとコンセプトマップ”ロジックツリーは、問題や課題をツリー状に分解して整理する手法です。系統図に似ていますが、ロジックツリーは「原因の分解」や「解決策の分解」など、論理的にMECE(漏れなくダブりなく)に展開することを重視します。
コンセプトマップは、概念同士の関係を矢印と接続詞で結んで図にしたものです。ロジックツリーが階層的な分解であるのに対し、コンセプトマップは概念間のネットワーク的な関係を表現します。
CSV とデータ交換
Section titled “CSV とデータ交換”CSV(Comma Separated Value)は、データの各項目をカンマ(,)で区切って記録するファイル形式です。テキスト形式であるため、異なるソフトウェア間でデータを受け渡す際に広く使われています。
たとえば、表計算ソフトで作成した売上データをCSV形式でエクスポートすれば、データベースソフトや別の分析ツールにそのまま取り込むことができます。
グラフのリテラシー ── だまされないために
Section titled “グラフのリテラシー ── だまされないために”グラフは強力な伝達手段ですが、作り方によっては誤解を招くこともあります。以下のようなチャートジャンク(不適切なグラフ表現)に注意しましょう。
- 縦軸の起点を0にしない: わずかな差を大きく見せかけることができる
- 3D効果の乱用: 奥行きのせいで値の比較が困難になる
- 不適切なグラフ選択: 時系列データに円グラフを使うなど、用途に合わないグラフ
データを正しく伝えるためにも、受け取る側としてだまされないためにも、グラフの読み方を理解しておくことが大切です。
試験で出るポイント
グラフの種類と用途の対応は頻出です。「苦情の多い順に棒グラフと累積比率の折れ線を組み合わせた図」→パレート図(2022年 問31)、「座席数・客単価・売上高の3要素の関係を1つの図で表す」→バブルチャート(2023年 問27)のように、状況説明からグラフ名を選ぶ問題に対応できるようにしましょう。
過去問で実力チェック
Section titled “過去問で実力チェック”過去問に挑戦
Q. ABC分析の事例として,適切なものはどれか。
- ア 顧客の消費行動を,時代,年齢,世代の三つの観点から分析する。
- イ 自社の商品を,売上高の高い順に三つのグループに分類して分析する。
- ウ マーケティング環境を,顧客,競合,自社の三つの観点から分析する。
- エ リピート顧客を,最新購買日,購買頻度,購買金額の三つの観点から分析する。
解答(令和3年)
正解: イ
Q. コールセンタの顧客サービスレベルを改善するために,顧客から寄せられたコールセンタ対応に関する苦情を分類集計する。苦情の多い順に,件数を棒グラフ,累積百分率を折れ線グラフで表し,対応の優先度を判断するのに適した図はどれか。
- ア PERT図
- イ 管理図
- ウ 特性要因図
- エ パレート図
解答(令和4年)
正解: エ
Q. あるオンラインサービスでは,新たに作成したデザインと従来のデザインのWebサイトを実験的に並行稼働し,どちらのWebサイトの利用者がより有料サービスの申込みに至りやすいかを比較,検証した。このとき用いた手法として,最も適切なものはどれか。
- ア A/Bテスト
- イ ABC分析
- ウ クラスタ分析
- エ リグレッションテスト
解答(令和4年)
正解: ア
Q. A社では,顧客の行動や天候,販売店のロケーションなどの多くの項目から成るデータを取得している。これらのデータを分析することによって販売数量の変化を説明することを考える。その際,説明に使用するパラメータをできるだけ少数に絞りたい。このときに用いる分析法として,最も適切なものはどれか。
- ア ABC分析
- イ クラスター分析
- ウ 主成分分析
- エ 相関分析
解答(令和5年)
正解: ウ
Q. ファミリーレストランチェーンAでは,店舗の運営戦略を検討するために,店舗ごとの座席数,客単価及び売上高の三つの要素の関係を分析することにした。各店舗の三つの要素を,一つの図表で全店舗分可視化するときに用いる図表として,最も適切なものはどれか。
- ア ガントチャート
- イ バブルチャート
- ウ マインドマップ
- エ ロードマップ
解答(令和5年)
正解: イ
Q. ある商品の販売量と気温の関係が一次式で近似できるとき,予測した気温から商品の販売量を推定する手法として,適切なものはどれか。
- ア 回帰分析
- イ 線形計画法
- ウ デルファイ法
- エ パレート分析
解答(令和6年)
正解: ア